artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
Under35
会期:2013/03/22~2013/04/14
BankART Studio NYK[神奈川県]
35歳以下の若手アーティストを紹介する「U35」シリーズ、今回はアーティストとギャラリー(またはマネジャー)のセットで公募し、選ばれた6組がBankART全館に展示している。アーティスト+マネジャーは、木村宗平+藤川悠、幸田千依+橋本誠、古久保憲満・松本寛庸+小林瑞恵、柵瀬茉莉子+森田彩子、高山陽介+橋本かがり、丸山純子+大友恵理。今回マネジャー込みで選んだのは、作品の展示・管理を任せてしまおうということと、作品を売ってもらって少しでも回収しようという思惑があるからだ。それによってまた、マネジャーの育成にもつながるし。ちなみにマネジャーはオーバー35が多いようだ。ジャンルは絵画、彫刻、インスタレーション、アウトサイダーアートとうまいぐあいにバラけた。U35とはいえそれなりにキャリアのあるアーティストたちなので、広々としたハードな空間に負けない作品を出している。注目株は、絵画の幸田と彫刻の高山。幸田は泳ぐ人ばかり描いていて、あらためて並べると壮観。会期中も会場で描き続ける。高山はチェーンソーで彫り刻んだ彫刻に絵具をかぶせた作品だが、おもしろいのは、あたかも制作中みたいに台座や木クズまで作品としていること。しかし彼らの作品も、古久保・松本の一途さ、ゆるぎのなさにはかなわない。
2013/03/22(金)(村田真)
鈴木紗也香 展
会期:2013/03/18~2013/03/23
ギャラリーQ[東京都]
さっき「VOCA展」で見て来たばかりだが、こちらは銀座のギャラリーなので中小品が中心。窓と室内を描いてるせいか、大作はタブローより壁画のほうが似合いそうな気がする。彼女は今年初め名古屋でおこなわれた「アーツチャレンジ2013」では、通路の壁に壁紙を貼ってその上に絵を飾っていたけど、フラットな色面をベースに窓や室内を描いてる絵だから、より壁面を意識して見せたほうが効果的だと思う。小品には和装の女性を描いたものもあった。なんじゃこりゃ? 新たな展開に向けての習作だろうか。
2013/03/21(木)(村田真)
VOCA 2013:現代美術の展望──新しい平面の作家たち
会期:2013/03/15~2013/03/30
上野の森美術館[東京都]
VOCA展も今年20回目を迎えた。そのため同館ギャラリーと第一生命ギャラリーでは20年間のVOCA賞作品を展示し、あわせて記録集も出している。その受賞作品を通覧すると、この20年間で着実に「VOCA的」と呼んでもいいようなスタイルが形成されてきたことがわかる。具体的にいえば、抽象画でもリアリズム画でもなく、華やかな色彩で筆触を強調した具象イメージのパッチワーク、といったところだ。これはしかしVOCAに限らずいまどきの絵画全般の傾向だが、VOCAがその傾向を先導し、また拍車をかけていることは間違いない。受賞作品の傾向が毎回コロコロ変わるのも困りものだが、これほど「VOCA色」が鮮明化してくるとみずから首を絞めることになりはしないか。その立役者というか元凶ともいえるのは20年間ほぼ固定席と化した4人の選考委員だろう。別に彼らが悪いわけではないけれど、20年を節目にメンバー全員入れ替えたらまた新鮮な平面作品に出会えるはず。毎回カタログに掲載される「選考所感」もマンネリ気味だし。さて本展。今年VOCA賞を獲得した鈴木紗也香の作品は、先に述べた「VOCA的」絵画の典型といえる。が、それだけでなく、「内と外」をテーマに窓や室内や画中画などを描いているせいか、画面空間が複雑な重構造になっていて目を喜ばせてくれるのだ。奨励賞や佳作賞は、柴田麻衣、平子雄一、大崎のぶゆき、吉田晋之介、佐藤翠の5人で、映像の大崎を除き、いずれも筆触を強調した半具象絵画という点でVOCA的だ。それはいいとして、気になるのは彼ら全員が複数のキャンバスやパネルにひとつの画面を切れ目なく描いていること。描かれた画像に切れ目はなくても物理的に合わせ目(垂直線)が見えてしまい、それが気になるのだ。画面が巨大だから複数のキャンバスを使うのはわかるが、それなら線を消すか、逆に線を画像に組み込むかするべきだ。またこれとは別に、加茂昂や小谷野夏木ら、異なるイメージを描いた複数のキャンバスを組み合わせて1点の作品として見せる試みも目についた。
2013/03/21(木)(村田真)
現代への扉 実験工房展──戦後芸術を切り拓く
会期:2013/01/12~2013/03/24
神奈川県立近代美術館鎌倉+鎌倉別館[神奈川県]
実験工房は、戦後まもない50年代に活動した先端的な総合芸術のグループ。顧問の瀧口修造をはじめ、山口勝弘、駒井哲郎、福島秀子、武満徹、湯浅譲二、秋山邦晴と名前を列挙するだけでもすごさがわかる。にもかかわらず、少し遅れて関西で活動した具体美術協会と比べて評価も知名度も低い。それはなぜなのか、この展覧会を見てよくわかった。実験工房は音楽の占める割合も大きかったので、具体のようにアンフォルメルやアクション・ペインティングといった視覚的にインパクトのある大作を残さなかったからだ。いっちゃ悪いが、具体は頭を使う前に体を動かすというイメージがあるのに対し、実験工房はもっと知的に洗練されていた印象がある。あくまで印象だが。それに具体のリーダー吉原は関西商人らしく商売上手、宣伝上手だったのに対し、実験工房の瀧口はとても控えめのインテリだったから、あまり社会に浸透しなかったのかもしれない。いずれにせよ、展覧会にしてしまうと実験工房は見るべきものが少なく、具体の圧勝だ。そういう具体も後の再制作が多いが。ところで、別館で上映されていた松本俊夫の自転車の映像は、なにか心をくすぐるものがあるなと思ったら、円谷英二が特撮を担当したという。なるほど、自転車や車輪がぎこちなく宙を舞う奇妙な浮遊感は、のちの怪獣映画やテレビのウルトラマンシリーズなどに見られる中途半端な浮遊感に通じるものだ。
2013/03/15(金)(村田真)
鈴木理策「アトリエのセザンヌ」
会期:2013/02/09~2013/03/27
ギャラリー小柳[東京都]
以前、セザンヌが繰り返し描いた南仏のサント・ヴィクトワール山を撮った鈴木が、今度はそのふもとにあるセザンヌのアトリエとその周辺を撮影している。アトリエ近くの林には日の光と影が交錯し、サントヴィクトワール山は光を浴びた山容と陰になった山容をとらえている。アトリエ室内は光が弱く、しっとり落ち着いた色調だ。画家と写真家の違いは、こうした光のとらえ方にあるのかもしれない。
2013/03/14(木)(村田真)