artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
若冲が来てくれました──プライスコレクション 江戸絵画の美と生命
会期:2013/03/01~2013/05/06
仙台市博物館[宮城県]
石巻に用事があり、仙台市博物館に寄る。「若冲が来てくれました」とは奇妙なタイトルだが、これは日本美術コレクターとして知られるアメリカのエツコ&ジョー・プライス夫妻の発案により、東日本大震災復興支援のために若冲をはじめとするコレクションを東北の被災3県に巡回するもの。プライス夫妻のコレクションは2006~07年にも「最後の里帰り展」として全国を巡回したが、今回は震災復興のためもういちど特別公開することに。だから若冲が来てくれたのは東京からでも京都からでもなく、カリフォルニアからなのだ(一部国内コレクションも出ている)。展示は画家別でも時代順でもなく、長沢芦雪の《白いゾウと黒いウシ》などの大きな屏風絵にはじまり、「目がものをいう」「数がものをいう」「プライス動物園」「美人大好き」と、美術的価値とは異なる観点から子どもでも親しめるように構成されている。作品名も《野をかけまわるウマたち》《のめやうたえや、おおさわぎ》《〈かんざん〉さんと〈じっとく〉さん》など、仮名表記でわかりやすく砕いて表わしている。これは肩ひじ張らずにだれでも楽しんで見てもらおうという主催者側の配慮だろう。実際、前に見たときよりずっと作品のおもしろさがダイレクトに伝わってきた。ひとつだけ不満をいえば、芦雪や曽我蕭白や鈴木其一や河鍋暁斎らの作品だって十分見ごたえがあるのに、タイトルが「若冲が来てくれました」になっていること。たしかに「若冲」のブランド効果は抜群かもしれないが、これではほかの絵師たちの立場がないし、プライスコレクションの過小評価にもつながりかねないではないか。
2013/03/28(木)(村田真)
鹿田義彦 個展「Images in Transition」
会期:2013/03/08~2013/03/30
ギャラリーt[東京都]
画面中央にビル、その左上に飛行機が写ってる写真が12枚並んでいる。これはなんだろうとよく見たら、1枚1枚飛行機の大きさや機種が違ってるのがわかる。あれ?っと思ってさらに見比べたら、手前を走る自動車や通行人もぜんぜん違うじゃないか。タイトルを見ると「Flight During One Hour」。なるほど、1時間のあいだ定点観測で、飛行機が同じ場所を通過するごとにシャッターを切っているのだ。真っ黒に塗りつぶした地球儀、床の溝にハシゴを立てたインスタレーションも。近ごろ広島市大出身におもしろいアーティストが多い。
2013/03/25(月)(村田真)
六本木アートナイト2013
会期:2013/03/23~2013/03/24
六本木界隈[東京都]
国立新美術館から東京ミッドタウン、六本木ヒルズと回ったが、とくに収穫もないので家に帰ろうと交差点に向かったら、アマンドのビルの4階でもなにかやってるというので寄ってみた。北沢潤の《サンセルフホテル──六本木ショールーム》だった。「サンセルフホテル」というのは取手市の団地を舞台に、太陽光エネルギーを利用して団地の空き部屋を客室に変えていこうというプロジェクト。ここはそのプレゼン用のショールームというわけだ。部屋の中央に天井いっぱいの照明バルーンが置かれているが、その明かりは昼に貯めた太陽光エネルギーで賄われているそうだ。目の前の首都高から見たら(地上からは見えない)六本木のど真ん中でなにやってんだと思うだろう。アマンドの入ったビルの一室というミスマッチなロケーションも含め、今夜はこれがいちばん納得できる作品(?)だった。
2013/03/23(土)(村田真)
カリフォルニア・デザイン1930-1965──モダン・リヴィングの起源
会期:2013/03/20~2013/06/03
国立新美術館[東京都]
今日は無料だからつい入っちゃったけど、デザインに興味はないんで足早にグルッと一周する。あ、おもしろいじゃん。作品はほとんど見なかったんでなにもいえませんが、会場構成がおもしろい。観客はまず展示室の壁に沿って大きく一周し、次いで内側にしつらえた仮設壁に沿ってもう一周するという動線。肝腎の作品は仮設壁にのみ展示され、部屋の内壁には1点も飾られていない。おまけに中央部分が広場のように空き、そこから全体が見渡せるという会場構成なのだ。これは展覧会場(エキジビション)というより展示場(エクスポジション)に近い。
2013/03/23(土)(村田真)
第66回日本アンデパンダン展
会期:2013/03/20~2013/04/01
国立新美術館[東京都]
うちの庭が騒がしいと思ったら、下界では「六本木アートナイト」が始まったらしい。ちょっとのぞいてみるかと足を向けたのは、本日に限り入場無料の国立新美術館。セコ! まずは敗戦直後から続く日本アンデパンダン展。アンデパンダンだからある程度ヘタな作品が並んでいるのは想定内だったが、ものすごくヘタな作品もあったのは想定外の喜びだった。どんなヘタな絵でも国立美術館に飾れることを証明してくれたんだから、絵描きに勇気を与える展覧会だ。ハッとするような作品もあった。しんぶん赤旗に掲載された風景のスケッチ数点を拡大コピーして額に入れたり、川越の古い蔵やカメルーンの人たちの顔のスケッチをボードに貼ったり、こんな「作品」があっていいんだろうかとハッとした。また今回はネット世代も採り込もうってわけか、入口で黄色い「いいね!」シールを配り、いいねと思った作品の脇に貼ってもらうことも試みていた。もちろん作品によって多い少ないはあるものの、ざっと見たところシールゼロというのはなかったな。ついでに「ヘタね!」シールもやってみればよかったのに。
2013/03/23(土)(村田真)