artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
楢橋朝子 写真展“in the plural”
会期:2012/11/20~2012/12/22
ツァイト・フォト・サロン[東京都]
水にぷかぷか浮かびながら水面スレスレから撮った写真ばかり。と思ったら、おそらくロープウェイ上から俯瞰したような風景写真や、走る車中から撮ったピンボケ写真、テレビ画面を撮った走査線入り写真もあって、さすがに水面スレスレ写真ばかり撮っていられなくなったのか。いずれにしても浮遊感のある写真だ。
2012/12/14(金)(村田真)
菅野由美子 展
会期:2012/12/05~2012/12/18
ギャルリー東京ユマニテ[東京都]
陶器や茶碗や胡椒入れなどの器を並べて几帳面に描いている。今回は一列に並べた極端に横長の作品もある。すべて原寸大なのでリアルなはずなのに、背景の壁に凹凸のある空間が出てきたせいか、デ・キリコのような超現実的な空気が漂う。いやキリコより、もっと現実離れしたスペインの厨房画家サンチェス・コターンに近づいたというべきか。どんどん浮世離れしていってないか。
2012/12/14(金)(村田真)
中村亮一「The world has begun to quietly say,“No”」
会期:2012/12/01~2012/12/26
LIXILギャラリー[東京都]
絵画の展示だが、矩形のタブローは1点のみで、一番の大作は木枠に仮留めしてるだけで張られておらず、あとの4点はベニヤ板を流動的なかたちに切った上に描いている。なにか物語性を感じさせる絵で、ちょっとネオ・ラオホに似ているけど技術が追いつかないといった印象だ。支持体にあれこれ凝るより描写力を身につけるほうが先だと思う。
2012/12/14(金)(村田真)
増田佳江「遠い歌 近い声」
会期:2012/11/29~2013/01/19
ギャラリー小柳[東京都]
舞台らしきものを正面から描いたり、ペルシャ絨毯のようなものを描いたり。モチーフの選択はおもしろいが、塗り方が雑。点描のように細かい筆跡を積み重ねていく描法なのに、せっかく美しい色彩が混ざって濁ってしまっている。キャンヴァスの張り方も無頓着。すべて木枠の裏側で留めているのだが、ふつう折り返しを上下ないし左右に統一するものを、彼女は上下左右が混在し、定まっていない。それは別に悪いわけでも困ったことでもなく、むしろそんなことを気にするぼくのほうがおかしいんだろうけど。
2012/12/14(金)(村田真)
虹の彼方──こことどこかをつなぐ、アーティストたちとの遊飛行
会期:2012/11/23~2013/02/24
府中市美術館[東京都]
今日は多磨霊園に墓参り。地図を見ると府中市美はすぐ近くなので寄ってみる。今回は芸術と日常の接点を探る企画展のようだ。出品作家は伊庭靖子、小木曽瑞枝、斎藤ちさと、塩見允枝子ら9人で、印象に残ったのは三田村光土里とmamoruの作品。三田村は、展示室にカメラ、タイプライター、レコード、フィギュア、本、地図、はかり、椅子、格言のような言葉などの日常品を持ち込み、そこに毛糸を絡めている。毛糸の端には「ART」「AND」「BREAKFAST」と描かれたジグソーパズルのピースがぶら下がり、もう一方の端にはカギが吊るされている。これはここ数年、三田村が世界各地で展開して来た「アート&ブレックファスト」というプロジェクトで、観客とともに朝食をとりながら語り合い、少しずつインスタレーションを築き上げていくというもの。この一部屋にさまざまな文化が共存し、糸で結ばれているわけだ。一方mamoruはインタラクティブなサウンドインスタレーション、訳せば双方向的な音の装置。ひとつは、テーブルの上に透明のガラス瓶を20個ほど置き、天井から釣り糸を垂らしている。観客がかたわらに置かれた冷蔵庫から氷を取り出して釣り糸に掛け、しばらく待つと氷が溶けて水滴がガラス瓶のなかに落ちていく仕組み。その音を静かに聞くという作品なのだ。もうひとつは、テーブルの上に大きさの異なる空のペットボトルを数十本並べ、その横に扇風機を置いている。観客がスイッチを入れると扇風機の風がペットボトルの口をなで、わずかな音をたてる。その上のほうには数十本のアルミのハンガーが掛けられ、そこにも扇風機の風があたり、シャララとわずかに音をたてる。なんと繊細な。
2012/12/09(日)(村田真)