artscapeレビュー
笹川治子「case.A」
2012年07月15日号
会期:2012/06/01~2012/06/17
Yoshimi Arts[大阪府]
ギャラリーに足を踏み入れると、防護服に身を固めた人の等身大写真や、汚れたコンピュータの端末やチューブでつながれた怪しげな機器類、原子力を想起させる「A」や核の記号が刻まれた金銀のメダルなどがところ狭しと並ぶ。一見、最近ありがちな反原発ネタかと思うが、そのわりに緊張感も悲壮感もなく、むしろちょっと間が抜けて楽しげですらある。たしかに防護服を着た人の写真はあるが、よく見ると顔は溶接工の使うマスクをつけてるだけで隙間だらけだし、チューブでつながれた機器類はたんなるハリボテでなんの用もなさない。メダルにいたっては厚さもまちまちな石膏製で、金と銀の塗料を塗ってあるだけのシロモノ。しかもそれらが雑然と置かれているのではなく、なんとなく等間隔に並べられているため、学芸会の発表のような場違いな楽しさを感じてしまうのだ。これは原発推進派はもちろん、反原発も脱原発もすべて相対化してしまう底意地の悪いインスタレーションではないか。
2012/06/16(土)(村田真)