artscapeレビュー
ホキ美術館「開館記念特別展」
2010年11月15日号
会期:2010/11/03~2011/05/22
ホキ美術館[千葉県]
11月3日、千葉市の郊外にオープンする写実絵画の専門美術館。オープンに先立って行なわれたプレスツアーに乗ってみた。東京駅からチャーターバスで1時間ちょっと、外房線土気駅から少し離れた新興住宅地の端っこにある。建物は長さ100メートルくらいのゆるやかな弧を描く角柱を横に倒していくつか組み合わせた斬新な設計。斬新なわりに目立たないのは高さ(7メートル)を周囲の2階建て住宅に合わせ、色もコンクリートのグレーに抑えたからだろう。でもそれが住宅地と公園のあいだに立ちふさがる長大な壁に見えないこともないが。しかしこの長大な角柱はギャラリー空間としてはきわめて合理的だと思う。もともとギャラリーは教会に付随していたアーケードや回廊のことだったし(「画廊」という訳語に名残をとどめる)、展示した作品を歩きながら見ていくには最適だからだ。内部は、真っ白い壁をゆるやかに波打たせ、鑑賞者の視野に変化を与えている。鑑賞空間としては理想的だと思う。が、そこに展示される中山忠彦、野田弘志、森本草介といった人物を中心とする写実絵画にふさわしいかというと、そうでもないような気がする。こうしたモダンなホワイトキューブ(というよりホワイトチューブ)の空間には額装した具象画より、額のない抽象画のほうがはるかに映えるはずだからだ。
2010/10/15(金)(村田真)