2019年08月01日号
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artscapeレビュー

ウフィツィ美術館 自画像コレクション

2010年10月15日号

会期:2010/09/11~2010/11/14

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

ウフィツィ美術館からヴェッキオ橋を渡ってピッティ宮殿まで続く、非公開の長大なギャラリー「ヴァザーリの回廊」。ここはラスコーの洞窟とともに死ぬまでにいちど入ってみたい場所のひとつ(どちらも筒状なのが意味深)だが、その回廊に保管・展示されている自画像コレクションが来るというので見に行った。「ヴァザーリの回廊」に関しては新しい情報を得られなかったが、自画像コレクションは予想外におもしろかった。まず気づくのは、意外なほど女性画家が多いということ。これに関しては『北海道新聞』(10月11日)にも書いたが、ローカル紙なので繰り返したい。今回新たに収蔵された日本人3人のうち草間彌生も含めて全81点中11点が女性の自画像だが、とくに女性画家が希少だった近代以前に絞ると28点中8点にもおよぶ。おそらく当時、女性画家は100人にひとりもいなかったはずだから、この高率はレオポルド・デ・メディチ枢機卿に始まる初期のコレクターの趣味を反映したものかもしれない。もうひとつは、自画像ならではの遊び心に満ちていること。たとえばアンニーバレ・カラッチは、わざわざイーゼルにのせたキャンヴァスを描き、そこに自分の顔を描いている。つまり自画像が画中画になっているのだ。ヨハネス・グンプは、鏡に映った自分の顔とキャンヴァスに描かれた自画像と、それを制作中の自分の後ろ姿という都合3つの自分を円形の画面に収めている。また、ニコラ・ファン・ハウブラーケンの自画像は、花の絵に囲まれた画面中央からキャンヴァスを破って顔をのぞかせるという奇想天外なアイデア。他人の肖像画ではこんな冒険はできませんね。

2010/09/29(水)(村田真)

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