artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

ノーマン・ロックウェル「オールディーズ、その愛しき素顔たち」

会期:2010/05/19~2010/07/11

府中市美術館[東京都]

まさかそれはないでしょ、と思っていたら本当にあった恐い話。ノーマン・ロックウェルといえば、その超絶的写実描写によりアメリカではいまだ絶大な人気を誇る国民的画家、というよりイラストレーター。そのため彼の作品は雑誌の表紙やポスターなど印刷物を通して親しまれ、ぼくも画集でしか見たことがなかった。だから今回の展覧会は、原画に触れて超絶技巧を解読できるまたとない機会として楽しみにしていたのだが、なんと35点のロックウェル作品の約半分は版画を含め印刷ではないですか。もちろんイラストだから複製されたものが本来の姿なのかもしれないけど、美術館で展示するんだから原画展を期待するのが常識でしょう。そもそも計70点ある出品作品のうち、ロックウェル作品は半分だけで、あとの半分はケヴィン・リヴォーリという報道写真家による関連写真の展示という構成なのだ。ま、十数点とはいえ原画を見られただけでもよしとすべきか。

2010/05/23(日)(村田真)

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伊藤若冲「アナザーワールド」

会期:2010/05/22~2010/06/27

千葉市美術館[千葉県]

昨年、ミホミュージアムで「ワンダーランド」が開かれたと思ったら、今年は「アナザーワールド」。タイトルだけだとまるでアリス。ここ数年、フェルメール展と同じく毎年のように開かれている若冲展、もうウンザリといいながら、またいそいそと見に行く。今回は、若冲に影響を与えた黄檗宗や沈南蘋の作品も展示しているので、若冲が必ずしもポッと出のオタク画家などではなく、ちゃんとルーツがあることが納得できる。でもやっぱり《動植綵絵》の出てない若冲展なんて、においのない屁みたいだ。

2010/05/22(土)(村田真)

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中村ケンゴ「自分以外」

会期:2010/05/11~2010/06/05

メグミオギタギャラリー[東京都]

手塚治虫のマンガの一部をつなぎ合わせた線描画や、部屋の間取りを色分けしたモンドリアン風抽象画(?)など、これまでのシリーズの延長上の新作展。これらを日本画の素材と技法で描くという意外性が、じつは意外でもなんでもなく、きわめて自然な発想であることに気づく。あわせて「スピーチバルーンミラー(フキダシ型の鏡)」やオリジナルTシャツも販売。

2010/05/21(金)(村田真)

久保晶太 絵本原画展2010「あたしのサンドイッチ」

会期:2010/05/18~2010/05/24

バートックギャラリー[東京都]

ふつう絵本の原画展など見に行かないが、久保くんは中学のときに同じ美術部に所属していた同窓生なので、10数年ぶりに会いに行ったのだ。久保くんと話すと、いかに自分が薄汚れた中年に成り下がったか落ち込んでしまうほど、中学生のままの純真な気持ちを保ち続けている稀有な人で(だいたい純真な中学生自体いまや絶滅危惧種だ)、それが絵本にも全開してるから胸が締めつけられそう。その絵本が出たのがぼくの『アートのみかた』とほぼ同時期だったので、お互いサインを入れて交換。『あたしのサンドイッチ』は教育画劇から出ています。

2010/05/21(金)(村田真)

岩井優/坂野充学「Spontaneous Order」

会期:2010/04/30~2010/06/05

タクロウソメヤコンテンポラリーアート[東京都]

映像中心の2人展。ギャラリーに入ってすぐの壁に、コップ、野菜、豆腐、パン、鯉などを次々に洗剤で洗う様子をガラスの底からとらえた岩井の映像が映し出されている。広島で発表するつもりだったのにキャンセルされたいわくつきの作品。鯉が問題になったらしい。生物の虐待がどーのというより、広島はカープ(鯉)の本拠地だからね。

2010/05/21(金)(村田真)