artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
暗がりのあかり──チェコ写真の現在展
会期:2010/06/19~2010/08/08
資生堂ギャラリー[東京都]
80年代以降のチェコで注目される10人の写真展。冷戦下の東欧から社会主義体制が崩壊する80~90年代は、時代を反映してモノクロームの暗い写真が多く、いかにもチェコ的(もちろん偏見)だが、21世紀に入ると西欧と変わらない明るく乾いた作品が増えていく。そうなると、先端を行く隣国ドイツの現代写真にいかに追いつき、いかに差異化を図るかが問題になってくる。たとえば、さまざまなシチュエーションでセルフポートレートを撮るディタ・ペペなどは、ありがちな写真として見過ごされてしまうが、双子を撮ったテレザ・ヴルチュコヴァは、ダイアン・アーバス的モチーフにロレッタ・ラックス的技巧を加えることで突出を試みる、といったように。
2010/06/22(火)(村田真)
「プラド美術館と模写作家たち──野田みち子氏」絵画展
会期:2010/06/15~2010/06/23
スペイン大使館展示室[東京都]
初めてスペイン大使館のなかに入った。最近改装されたのだろうか、地下は広々としたギャラリーになっている。展示されているのは、プラド美術館認定の模写画家、野田みち子によるエル・グレコを中心とする模写。はっきりいって、プラド美術館が認定したわりにデッサンがヘタ。エル・グレコの絵はもともとプロポーションが歪んでるのであまり違和感がないが、1点あったティツィアーノは「どこがティツィアーノ?」って感じ。しかしそんな技術的問題などものともせず、ひたすら模写に打ち込む情熱とエル・グレコへの愛情はひしひしと感じられた。
2010/06/22(火)(村田真)
アウトレンジ2010
会期:2010/06/09~2010/06/22
文房堂ギャラリー[東京都]
美大の教官が学生を選ぶ大学対抗グループ展。今回は金沢美大、東京造形大、美学校、武蔵美から学生5人と教官4人が出している。教官はO JUN、西島直紀、蓜島伸彦、宮島葉一で、小品のみ。学生の作品ともども売ってるが、食指は動かなかった。
2010/06/15(火)(村田真)
「小屋丸:冬と春」試写会
会期:2010/06/15
映画美学校試写室[東京都]
2003年の越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭」で、十日町市の小屋丸集落に《リトル・ユートピアン・ハウス》をつくったジャン=ミッシェル・アルベローラが、その小屋丸の厳しい冬を撮ったドキュメンタリー映画。テーマはひとことでいえば、キャッチコピーにあるように「なつかしいユートピアがここにある」。出てくるのはじいちゃんばあちゃんばっかだし、もともとモノクロに近い雪国をモノクロで撮っているので、エンタテインメントにはほど遠い映画ではある。が、だからつまらないかといえばそうではなく、その情報の少なさや田舎的時間の流れが逆に見る者を覚醒させ、近ごろ珍しくモノクロームな気分に染め上げてくれる。まあ越後妻有にもアルベローラにも地域文化にも興味なければ、退屈きわまりない映画だろうけど。
2010/06/15(火)(村田真)
室内風景「西尾真代」
会期:2010/06/10~2010/06/13
よこはまばしアートピクニックTOCO[神奈川県]
床屋さんだった店鋪を改装したギャラリー(だからTOCO)にも興味をもったが、なにより西尾真代の作品を見たかったので、横浜市営地下鉄の板東橋まで足を伸ばす。彼女は一貫して自分んちの室内風景ばかりを描いているのだが、いわゆる広角でとらえた室内風景ではなく、柱や階段や天井の一部、下から見上げた照明など、部分を拡大して半抽象化したかたちばかり。しかもその家は西洋風のお屋敷ではなく、1世代前の木造モルタルの典型的な日本家屋……と、こう書いていま気づいたが、彼女の絵には高橋由一の匂いがするのだ。つまり、日本的な風土・環境のなかに油絵を順応させようとする四畳半的座敷わらしの匂いというか。とくに今回は床屋さんの家屋が彼女の描く室内図と近い質感をもっているため、展示場所としてはハマリすぎくらいにハマっていた。
2010/06/11(金)(村田真)