artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

THEハプスブルク

会期:2009/09/25~2009/12/14

国立新美術館[東京都]

おそれおおくも本日は天皇陛下即位20年を記念して200円割引ってことで見に行く。それでも1,300円するからね。東博の「皇室の名宝」展は無料だって。タダでさえ混んでるのに、タダならもっと混むぞ。シャレです。「ベラスケスもデューラーもルーベンスも、わが家の宮廷画家でした」というコピーが物語るように、おそれおおくもハプスブルク家はメディチ家と並ぶヨーロッパ最大のパトロン。つまり「王室の名宝」展のはずなのに、この程度の作品しか来てないんじゃ誤解されかねない。ティツィアーノもルーベンスも収蔵庫から引っぱり出して来たみたいな在庫一掃セール的2流品だし、ルドルフ2世の好んだピーテル・ブリューゲル(父)は1点もないし。でもそのルドルフ2世を描いた肖像画をはじめ、デューラーの《若いヴェネツィア女性の肖像》、ベラスケスの《白衣の王女マルガリータ・テレサ》など見るべきものもあった。注目したいのは、ユディットやサロメなど首を斬る絵が何点か出ていたこと。昔の皇室じゃなかった王室は血がお好きだったようで。

2009/11/12(木)(村田真)

‘文化’資源としての〈炭鉱〉展

会期:2009/11/04~2009/12/27

目黒区美術館[東京都]

これはまたよく集めたもんだと感心する。炭鉱を描いた風景画だけでも、素人の炭鉱マンの手になる稚拙な絵もあれば、野見山暁治や立石大河亞らプロの画家による油彩画もあるし、山本作兵衛のように坑内の様子を克明に描写した記録画もあれば、「ヤマ」を抽象化した大作もあるし、労働者を強調した社会主義リアリズムもある。そのほか、五木寛之の小説『青春の門』を飾った風間完の挿絵、土門拳の写真集『筑豊のこどもたち』、岡部昌生のフロッタージュ、労働運動のポスター、川俣正のパノラマ的インスタレーションまで、少しは取捨選択しろよといいたくなるほど手当りしだい集めている(ように見える)。が、本当は「たったこれだけ?」というべきかもしれない。炭鉱は日本の近代化を担った基幹産業であり、半世紀以上にわたり何十万もの人々が関わってきた一大社会だっだったはず。そんな炭鉱に関係する美術作品が、ギューギューづめとはいえ小さめの美術館にすっぽり収まってしまうのだから、少なすぎるというべきだろう。一見、量で勝負しているように見えるこの展覧会、じつは量の少なさによって「炭鉱をめぐる美術」の危機を訴えているのかもしれない。

2009/11/06(金)(村田真)

トーマス・ルフ「cassini+zycles」

会期:2009/10/16~2009/12/19

ギャラリー小柳[東京都]

衛星や土星の環の画像。NASAがネット上に公開している写真だそうだ。だれが撮ったものだろうが、天体写真はそれだけで美しい。だからズルイって気がする。

2009/11/06(金)(村田真)

ジャン・ミッシェル・アルベロラ展「大きいものと小さいもの──チャプター2」

会期:2009/10/10~2009/11/29

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

東京とパリの地下鉄の切符やネオン作品もあるが、圧巻は壁画。この鮮やかな色づかいと軽快な線描はさすがフランス、とつくづく思う。

2009/11/06(金)(村田真)

三保谷硝子店──101年目の試作展

会期:2009/10/27~2009/11/08

アクシスギャラリー[東京都]

宮島達男、杉本博司、吉岡徳仁らとコラボしたガラス屋さんの展覧会。アーティストによって透明性、輝き、量塊感などガラスに対する着目点が異なるので、それぞれのニーズにガラス職人はこたえなければならないから大変だ。内部を鏡張りにした球形のなかにデジタルカウンターをちりばめた宮島の作品が美しい。

2009/11/06(金)(村田真)