artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
皇室の名宝──日本美の華
会期:2009/10/06~2009/11/03(1期)
東京国立博物館[東京都]
若冲の《動植綵絵》全30幅が出ているというので、第1期の終了間近に見に行く。朝一番に出かけて真っ先に若冲の部屋に駆けつけたが、会場はすでに黒山の人だかり。それでもなんとか見ることができた。若冲はやっぱりすごい。なにがすごいかって、彼は動植物を描こうとしているのではなく、「絵」を描こうとしていることだ。このなかで若冲に匹敵するのは、唯一北斎の《西瓜図》だけではないかしら。それに比べりゃ抱一の《花鳥十二カ月図》など屁みたいなもの。
2009/10/30(金)(村田真)
チャールズ・ウォーゼン「ポリフォリーズ」
会期:2009/08/01~2009/11/03
府中市美術館[東京都]
毒々しい色のプラスチックを使って、かわいいかたちを成形するチャールズ・ウォーゼン。20年ほど前に何度か作品を見せてもらったが、いまもほとんど作品が変わってないことに安心する。というか、不安になるべきか。
2009/10/27(火)(村田真)
多摩川で/多摩川から、アートする
会期:2009/09/19~2009/11/03
府中市美術館[東京都]
河口龍夫と同じく、学生時代に『美術手帖』かなにかの図版で見た高松次郎の《石と数字》と、山中信夫の《川を写したフィルムを川に映す》がなつかしい。前者は河原の石に数字を振っていく作品、後者は文字どおり川面を写したフィルムをもういちど川面に映写するイベントで、どちらも無意味な反復や自己言及を繰り返す点で、1970年前後の閉塞的な時代状況を反映している。こうした行為がなぜ隅田川や荒川ではなく、新興の多摩川で行なわれたかといえば、河原が広くて自然が残されていたからということに加え、当時は藝大よりずっと先端的だった多摩美が二子玉川にあり、また近辺にスタジオを構える作家たちが多かったからだろう。
2009/10/27(火)(村田真)
東京ミッドタウン・アワード2009
会期:2009/10/23~2009/11/03
デザインとアートの2部門のコンペで、受賞作品を通路のショーウィンドーのなかに展示している。デザインのほうは「日本の新しい手みやげ」をテーマに、1,322点の応募作品中9点が選ばれた。たとえば、ビールを注げば泡が冠雪に見える裾広がりの《富士山グラス》、気軽に料理を盛りつけられる組み立て式の紙皿《笹船DISH》、羊羹がちょんまげのかたちをしている《チョンマゲ羊羹》など、ウィットに富んだアイデアが多い。ただ昔の「王様のアイデア」を思い出してしまうが。355点の応募作品から4点が選ばれたアートは、彫刻、映像、LEDの光と表現も多彩だったが、いまひとつ決め手に欠けるような印象。村田真賞は、自家製の陶器をはじめ書画骨董をめいっぱい並べた福本歩かな。
2009/10/27(火)(村田真)
ウェイ・ジャ展
会期:2009/10/10~2009/10/31
小山登美夫ギャラリー[東京都]
中国のアートは一時的に落ち込んだものの、すぐ復活したらしい。その中国で金融危機前の2007年に「もっとも影響力のある若手アーティスト賞」を受けたのがウェイ・ジャだ。一見、描写は稚拙に見えるけど、天使や少年のモチーフといい、絶妙な色彩やペインタリーなタッチといい、たしかに魅力的な絵ではある。
2009/10/24(土)(村田真)