artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

ニュータウンピクニック

会期:2009/10/20~2009/11/07

大塚・歳勝土遺跡公園+横浜市歴史博物館+都筑民家園[神奈川県]

遺跡公園と民家園を舞台にした展覧会。公園には竪穴住居がいくつか復元されているが、画期的なのは住居内にも作品が展示されてること。遺跡目当てに訪れた人は、古代住居に現代美術が上書きされてるのを見て驚くんじゃないかしら。こんなことができるのも、近くの歴史博物館が主催に加わっているからこそ。もちろん竪穴住居がレプリカだからというのもあるが。でも残念ながら、作品の多くはせっかくのロケーションを生かしきれてない。むしろ竪穴住居の外にすぐれた作品が見られた。何十本もの傘をシェルター状に組んで現代の竪穴住居にした今井紀彰、人型の穴を掘って脇に一升瓶を置き(実際に本人が酒を飲んで寝たらしい)、弥生時代の酔っ払いの遺跡にした開発好明、公園の何カ所かに望遠鏡みたいな筒を設置してのぞき心をくすぐる大谷俊一、歴史博物館の屋上に博物館から引っぱり出してきた標本箱でインスタレーションした久村卓などだ。

2009/11/03(火)(村田真)

第10回SICFグランプリ:酒井翠「にっき」展

会期:2009/10/29~2009/11/03

スパイラルショウケース[東京都]

毎日1箱のクレヨンを使って絵日記を書くのだが、書かれた日記でなく、使い残したクレヨンのほうを見せている。だからどの色のクレヨンが短かくなってるかで、どの季節にどんな絵が描かれたかが少しは想像できるかもしれない。とはいえ、そんなクレヨンを何十箱も並べたところで変わりばえしないので、2~3カ月もするとクレヨン自体にいろいろ細工をするようになる。クレヨンの色の配置を変えたり、クレヨン本体に文字を書いたり、クレヨンを箱ごとコピーしたものを展示したり、といったように。このように作者本人も予測しなかったような見せ方の飛躍や変化のほうに、むしろ興味をそそられる。もちろんそれも含めて作者の計画だったのかもしれないが。ほかに、毎日1本のカセットテープに録音した作者の言葉を再生する「声日記」も。

2009/11/03(火)(村田真)

エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ULTRA002」

会期:2009/10/29~2009/11/03

スパイラル[東京都]

画廊単位ではなく、まだ自分の店をもたない若手ディレクターが個人単位で出展するアートフェア。タイトルの「002」は2回目の意味だろう。3ケタだから最低100回、最高999回までやる気か。無料ゾーンを一巡して、ディレクターも出品作家も8割方知らないことに愕然とする。完全に置いてけぼり状態。有料のホールに入ろうと招待状を出したら、それはオープニングの招待状なので1,000円払わなければならないといわれ、とぼとぼ帰りました。

2009/11/03(火)(村田真)

大・開港展

会期:2009/09/19~2009/11/23

横浜美術館[神奈川県]

横浜港開港150年を記念する展覧会。サブタイトルに「徳川将軍家と幕末明治の美術」とあるように、お約束のペリーの肖像画やベアト撮影の写真、歌川(五雲亭)貞秀の横浜浮世絵はもちろん、横浜とは直接関係ない幕末・明治のビザールな美術工芸品もたんまり出ていてうれしい。高橋由一の《美人(花魁)》や、初代宮川香山のスーパーリアリズム高浮彫陶器もある。珍しいのは最後の将軍徳川慶喜の描いた油絵(由一より早い!)と、慶喜をはじめとする徳川家を描いた川村清雄の肖像画。川村は幕府御庭番(庭掃除をするのか)を務めた旗本の家に生まれたため徳川家とつながりがあり、勝海舟が将軍の肖像画制作を斡旋したという。こりゃ開国博よりずっとおもしろいしタメになる。って開国博は見なかったけど。

2009/11/02(月)(村田真)

和田円佳「トラベリング0」

会期:2009/10/31~2010/01/03

Porto Gallery[神奈川県]

日本3大ドヤ街のひとつ、横浜の寿町。その3畳一間のドヤ(“ヤド”の逆で簡易宿泊所のこと)も住人の高齢化にともない、低予算旅行者のためのホステルに転換するところも出てきた。そのホステルのひとつ、ポルトがロビーや廊下をギャラリーとして開放し作品を展示している。わざわざこんなところまで作品を見に来る人はいないだろうし、また監視人がいるわけでもなく、恥はかき捨てる旅行者が出入りする場所だから、きわめてリスキー。いや、ここで展覧会をやらないかといわれて見に来たんです。

2009/10/31(土)(村田真)