artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
版画がつくる 驚異の部屋へようこそ!展
会期:2009/08/08~2009/09/23
町田市立国際版画美術館[東京都]
版画にはあまり興味がないのでこの美術館にはあまり足を運ばないが、今回は喜び勇んで駆けつけた。というわりに会期も半ばをすぎているのは、こんな展覧会をやってることすら知らなかったからだ。ヴンダーカマー同好会(いま設立)としてはもっと宣伝してほしいし、カタログもつくってほしかった。16~17世紀ヨーロッパの王侯貴族のあいだで流行した、科学と魔術と芸術の未分化なヴンダーカマー(驚異の部屋)の雰囲気を伝える版画をはじめ、キルヒャーの『シナ図説』、ヨンストンの『動物図譜』、18世紀の人体解剖図、ソーントンの植物誌『フローラの神殿』など、澁澤龍彦ならずとも狂喜しそうな博物図譜が並んでいる。さすが版画美術館、こんなのももってるとは。
2009/09/08(火)(村田真)
越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009
会期:2009/07/26~2009/09/13
越後妻有地区[新潟県]
午前中に松代の城山に登って汗をかき、昨晩の酒を抜く。中腹に点在する作品は以前にも見たけど、もっと上のほうの國安孝昌と豊福亮の作品は見てなかったのだ。どちらも力作だが、空地に材木とレンガを積み上げた國安のモニュメンタルな構築物がファロス的だとすれば、松代城の内部を金でおおって胎内巡りをする豊福のそれは明らかにヴァギナ的。見事な好対照を見せていた。
2009/09/06(日)(村田真)
きのこダンス「キンシーズ!」
会期:2009/09/05
まつだい雪国農耕文化村センター[農舞台][新潟県]
越後妻有の山林には子どもだけに見えるキノコの精霊が棲み、その霊を鎮めるためのキノコ踊りが行なわれてきたという。そのキノコ踊りを現代によみがえらせようとする試みが行なわれた。珍しいキノコ舞踊団ではない。村上華子企画の「キンシーズ」だ。キノコ踊りを再生させるためダンサーの森下真樹が呼ばれ、地元の素人よさこい団体「華焔」とともにダンスワークショップを重ねて、今回の発表となったもの。いわば村上華子と森下真樹と華焔ががっぷり4つならぬ3つに組んだ三位一体のダンス……のはずなのだが、村上のいかにもありそうな空想物語と、森下のモダンダンスから少し脱線した振付けと、華焔の農耕民的な素人丸出し踊りが、それぞれ自己主張しながら3すくみ状態に陥った印象だ。まあ3者がそれぞれやりたいことをやりたいようにやったのなら、それに越したことはないが。ひとつとてもよかったのは、企画者がどこまで計算に入れていたかは知らないが、舞台の向こうの棚田にカバコフ夫妻による農耕民の彫刻が闇のなかから時たま浮かび上がり、舞台上のモダンもどきのキノコ踊りとオーバーラップしていたことだ。
2009/09/05(土)(村田真)
東京フォト2009
会期:2009/09/04~2009/09/06
ベルサール六本木[東京都]
ありそうでなかった写真のアートフェア。だからといって珍しさやありがたみが感じられるわけでもなく、むしろ既視感すら漂うのはなぜだろう。それは写真だからですねやっぱり。
2009/09/03(木)(村田真)
第94回二科展
会期:2009/09/02~2009/09/14
国立新美術館[東京都]
似たり寄ったりの作品が多い日展に比べて、二科展のほうが抽象ありヌードありコラージュありとバラエティに富んでいる。質的にもバラエティに富んでるが。しかし、織田廣喜が何人もいるのには驚いた。ここではまだ徒弟制が続いていて、モダニズムが浸透してないのかもしれない。
2009/09/03(木)(村田真)