artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
やなぎみわ 婆々娘々!
会期:2009/06/20~2009/09/23
国立国際美術館[大阪府]
CGを使った初期の《エレベーターガール》から、半世紀後の自分に扮する《マイ・グランドマザーズ》、今年のヴェネツィア・ビエンナーレに出した巨大な最新作《ウィンドスウェプト・ウィメン》まで出品。ウムをいわせぬ迫力に圧倒される。まいりました。
2009/09/11(金)(村田真)
水都大阪2009
会期:2009/08/22~2009/10/12
中之島公演ほか[大阪府]
かつて大阪は「水の都」といわれたくらい川や運河が縦横に走っていたが、近代以降は水に背を向けフタをしてきた。その水=川にもういちど目を向け、アートでにぎわいを取り戻そうというプロジェクトが「水都大阪」だ。プログラムは、中之島の東端の公園で繰り広げられる体験型の作品やワークショップを集めた「水辺の文化座」、中之島近辺の歴史的建造物に作品を設置する「水都アート回廊」など、いくつかに分かれている。いわば巨大都市を相手にした「水際作戦」だが、それだけにアーティストもプロデュース側も苦戦した様子がうかがえる。自分でポンプを押さなければ水が出ない小沢剛の《人力噴水》や、福沢諭吉らを輩出した適塾に最小限の作品しか置かなかった今村源の《茸的熟考》は、そのへんの事情を逆転させた佳作といえる。
2009/09/11(金)(村田真)
広島アートプロジェクト2009「吉宝丸」
会期:2009/09/05~2009/09/23
広島市中区吉島地区[東京都]
街なかの広場や倉庫に作品を点在させ、観客はそれを自転車で見てまわるという、ま、最近よくあるやつ。予算も乏しそうだし、名の知られたアーティストも少ないのであまり期待しないで見に行ったら、これが意外とよかった。作品は全体に小ぶりで、場所的にも谷口吉生設計の中工場を除いて「絶景」はなかったが、それぞれの場所に敏感に反応してつくられたサイト・スペシフィックな作品に秀作が多かったように思う。たとえば、倉庫にもともと備わっていた機器類をポップにリニューアルした谷山恭子や、中工場のデッキ突端に対岸のクレーンを模して糸製クレーンを建てた岩崎貴宏、1枚のパンティをほぐした糸で数カ所にクモの巣を張った平野薫、建物の外壁の汚れを削って山水画を描いた水口鉄人(写真)などがいい例だ。また、フライドチキンの骨を組み合わせて小さな人体骨格をつくった祐源紘史や、能面の表面を削ってかわいい顔にしてしまった青田真也など、場所とは関係なくおもしろい作品も散見された。村田真賞は水口鉄人に決定。いやあ、広島まで足を伸ばしてよかった。
2009/09/10(木)(村田真)
トロマラマ
会期:2009/07/18~2009/09/13
広島市現代美術館[広島県]
木炭デッサンを少しずつ描き直しながら撮るアニメはしばしば見かけるが、木版画でそれをやったのを見るのは初めて。作者のトロマラマはインドネシアの若手アーティスト3人によるグループ。上映された《セリガラ・ミリシャ》は、まっさらな板に少しずつ彫りながら撮影したものだが、ある程度彫ったら新しい板に換えてまた彫らなければならないから大変な作業だ。その厖大な労力に心を奪われ、へヴィメタの音や社会的メッセージは記憶が薄い。
2009/09/10(木)(村田真)
小沢剛──透明ランナーは走りつづける
会期:2009/08/01~2009/09/27
広島市現代美術館[広島県]
《地蔵建立》《なすび画廊》《ベジタブル・ウェポン》などなじみのある作品から、初めて見る《天空からの絨毯》と新作《広島・比治山七不思議》まで、20年の活動を回顧。こうやって見ると、かつてのヌケてたところが抜けてきて、なんか社会派っぽくなりつつあるんじゃないか。
2009/09/10(木)(村田真)