artscapeレビュー

きのこダンス「キンシーズ!」

2009年10月15日号

会期:2009/09/05

まつだい雪国農耕文化村センター[農舞台][新潟県]

越後妻有の山林には子どもだけに見えるキノコの精霊が棲み、その霊を鎮めるためのキノコ踊りが行なわれてきたという。そのキノコ踊りを現代によみがえらせようとする試みが行なわれた。珍しいキノコ舞踊団ではない。村上華子企画の「キンシーズ」だ。キノコ踊りを再生させるためダンサーの森下真樹が呼ばれ、地元の素人よさこい団体「華焔」とともにダンスワークショップを重ねて、今回の発表となったもの。いわば村上華子と森下真樹と華焔ががっぷり4つならぬ3つに組んだ三位一体のダンス……のはずなのだが、村上のいかにもありそうな空想物語と、森下のモダンダンスから少し脱線した振付けと、華焔の農耕民的な素人丸出し踊りが、それぞれ自己主張しながら3すくみ状態に陥った印象だ。まあ3者がそれぞれやりたいことをやりたいようにやったのなら、それに越したことはないが。ひとつとてもよかったのは、企画者がどこまで計算に入れていたかは知らないが、舞台の向こうの棚田にカバコフ夫妻による農耕民の彫刻が闇のなかから時たま浮かび上がり、舞台上のモダンもどきのキノコ踊りとオーバーラップしていたことだ。

2009/09/05(土)(村田真)

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