artscapeレビュー
全国小津安二郎ネットワーク総会 基調講演「建築からみる小津安二郎~開口部を通じて他の映画と比較する」
2016年06月15日号
会期:2016/05/08
江東区古石場文化センター[東京都]
全国小津安二郎ネットワークの総会において、基調講演「建築からみる小津安二郎~開口部を通じて他の映画と比較する」を行なう。小津ファンが集まる場なので、3日間に10本近く立て続けに彼の映画を再見した。空間論に関する新しい気づきもあったが、改めて彼の作品群における人物の入れ替え可能性、欠損家族ゆえに女性が交換される物語の構造が強く感じられる。総会では、NHKの「美の壺」の取材が入り、また『お早よう』で子役だった音楽家・設楽幸嗣と当時助監督を務めた田中康義のトークも行なわれた。撮影時以来の対面なので、なんと約60年ぶり! らしい。貴重なエピソードやセットに使われたマグカップが披露された。ところで、会場の江東区古石場文化センターは、小津が江東区に生まれ育ったことから、彼や地域ゆかりの映画の常設展示がある。また下部に図書館や会議室を含む公共施設が入り、上部が都の賃貸集合住宅という官民の複合施設の走りだった。
写真:上=セットに使われたマグカップ 下=江東区古石場文化センター
2016/05/08(日)(五十嵐太郎)