artscapeレビュー

オデッセイ、ザ・ウォーク

2016年02月15日号

行き帰りの飛行機で映画を見る。『オデッセイ』は火星に取り残されたマット・デイモンがサバイバルするSFだ。同じ俳優が惑星でひとり過ごすというプロットは、『インターステラー』とも一部重なっているのが笑える。後半は宇宙スケールの展開だが、農業と化学の智恵で生き抜く前半が面白い。なお、映画産業の新しい、そして大きなマーケットとしての中国の存在感が、この映画の終盤でもはっきりと現われていた。『ザ・ウォーク』は世界貿易センタービルの双塔を綱渡りで歩いた男の実話である。以前同じテーマのドキュメンタリー映画はあったが、今回はCGならではの体感映像や消えた建物の再現によって、われわれに奇跡の瞬間を臨場感たっぷりに追体験させる。結果を知っていても、いかに計画し、準備するかという銀行強盗映画的な面白さがあり、WTCが愛おしく思える建築映画でもある。また綱渡りが最高のアートとしての身体表現だと教えてくれる。

2016/01/03(日)(五十嵐太郎)

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