artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

所蔵作品展「MOMATコレクション」

会期:2013/10/22~2014/01/13

東京国立近代美術館[東京都]

これまでに近代日本の歴史をたどる国立近代美術館の常設を何十回も訪れたが、特に関東大震災から幻の1940年東京オリンピックの頃までを見入る。現在と似たような時代と言えるからだ。当時、画家の津田青楓が、キリストの磔刑図のように、官憲による拷問で亡くなったプロレタリアート文学の小林多喜二と窓の外の国会議事堂を描いている。その後、津田も警察に連れていかれるが、再び繰り返して欲しくない時代だ。

2013/12/20(金)(五十嵐太郎)

吉岡徳仁 クリスタライズ

会期:2013/10/03~2014/01/19

東京都現代美術館 企画展示室B2F他[東京都]

都現美では同時にデザイナー、吉岡徳仁のクリスタライズ展を開催していた。最近の活動の集大成と、結晶による新作の絵画や彫刻などを紹介する。ぎらきらと輝くクリスタルのユートピア世界は、ブールノ・タウトやパウル・シェーアバルトのヴィジョンを想起させるだろう。さらにマティスの礼拝堂に着想を得た虹の教会という建築的なスケールのプロジェクトまで展開していた。全体を白で統一し、作品以外にも空間を体験できるインスタレーションになっていたのがよかった。

2013/12/20(金)(五十嵐太郎)

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うさぎスマッシュ展 世界に触れる方法

会期:2013/10/03~2014/01/19

東京都現代美術館 企画展示室3階、1階A室[東京都]

トリエンナーレが忙しくて、ようやく足を運んだ都現美の「うさぎスマッシュ」展。ジャンルを軽やかに横断するデザイン/科学×アートは、ここ数年増えている企画だろう。建築系では、AOM/OMAのEU国旗とシアトル図書館プログラム、震災と津波の記憶を未来に伝えるためのアトリエ・ワンによる世界遺産をコラージュしたドローイングが出品されている。以前、作品集で見ていたリチャード・ウィルソンのオイルを張った空間も体験できた。

2013/12/20(金)(五十嵐太郎)

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対話の可能性 LOVERS 永遠の恋人たち

会期:2013/11/07~2014/01/12

せんだいメディアテーク 6Fギャラリー[宮城県]

せんだいメディアテークにて、故・古橋悌二が参加していたダムタイプの展示を見る。「LOVERS 永遠の恋人たち」の静謐なインスタレーションほか、「S/N」が上映されていた。両方とも懐かしい。メディア・アートもそう感じる時代を迎えた。ダムタイプは、西洋人とは異なる、日本人の身体をうまく使い、映像と身体表現のパラダイムをつくり出したと思う。

2013/12/18(水)(五十嵐太郎)

フォスター卿の建築術

アップリンクから『フォスター卿の建築術』のDVDが出るのに併せて、テキストを依頼された。その時初めて見たのだが、とても面白い。子どものときに初めて描いたドローイングが飛行機で、自分が建築家として働きながら空を飛ぶ感覚を味わっていたという。映画の『風立ちぬ』を思い出すエピソードである。ベルリンのラヒスタークに関して、興味深い話があった。当初、フォスターは議事堂を覆う巨大な大屋根を提案していたが、コストがかかり過ぎるということで没になり、ドームの復元が要求されたらしい。が、たんに過去の再生では納得がいかないから、現在の環境共生型のガラスのドームになったという。

2013/12/15(日)(五十嵐太郎)