artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

フェスティバル/トーキョー13「四谷雑談集」

会期:2013/11/09~2013/11/24

[東京都]

フェスティバル/トーキョー13がスタートした。中野成樹と長島確による「四谷雑談集」に参加した。四谷怪談の元ネタに関する「TALK」、実際に四谷を歩く「WALK」、屋敷跡にたどりつき「PARK」で解散するというプログラムである。お岩さんという強力な物語装置を契機に、想像力を駆使し、東京の街が江戸にタイムスリップしていく。一種のクリエイティブ・ツーリズムのようでもあり、坂道が多いエリアなので、ブラタモリ+東京スリバチ学会のようでもあるが、失踪したお岩の恨みから、30年にわたり、関係者が十数人も亡くなった300年以上前の物語を想いながら歩くのは、不思議な体験だった。やや曇った天気も、雰囲気を盛り上げる。今年のコンセプト「物語を旅する」そのものである。

2013/11/09(土)(五十嵐太郎)

神戸ビエンナーレ2013「横尾忠則 感応する風景」展/横尾忠則 肖像図鑑

兵庫県立美術館(2013/10/01~12/01)/横尾忠則現代美術館(2013/09/28~2014/01/05)[兵庫県]

前回の神戸ビエンナーレでは、兵庫県立美術館が同時期に開催した榎忠展が圧倒的なインパクトだった。今回はここと、新設された横尾忠則現代美術館が、同時に横尾展を行なう。前者は風景画、後者は人物画をテーマとする。Y字路シリーズは、時空間がねじれた感じで、建築畑には興味深い。また兵庫県立美術館の「2013年度コレクション展2」は地味だし、公式ガイドブックでも触れられていないが、関西のアート界を45年間支えた大阪の信濃橋画廊に焦点をあてた好企画である。地域の歴史を振り返り、ギャラリーの変遷と大きさもわかるようにしており、素晴らしい。

2013/11/03(日)(五十嵐太郎)

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港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ2013

会期:2013/10/01~2013/12/01

メリケンパーク・神戸エリア、兵庫県立美術館・ミュージアムロードエリア、三宮・元町エリア[兵庫県]

神戸ビエンナーレをまわる。大森ディレクターが述べていたように、脱「現代美術」が特徴と言えるので、あいちトリエンナーレとは全然違う。アート・イン・コンテナ以外にも、創作玩具国際展、書道展、いけばな未来展、コミックイラスト展、しつらいアート展、グリーン・アート展などを同時に平行して展開するからだ。BBプラザでは、現代陶芸展と地元作家展を行なう。前回は震災の影響で、コンテナを使わず、屋内で開催していたが、今回はいつものように、屋外でコンテナを使っており、統一感が出る。内容は多様でも、コンテナという強力な同一の形式が大量に繰り返されるからだ。今回、元町高架下はペインティングアート展になり、巨大な絵画が並ぶ。建築家では、石上純也事務所出身の萬代基介がメリケンパークに多数の椅子を配置しており、それを見るのも目的だった。安蔵隆朝のメディア・アートが大賞は納得できる。神戸ビエンナーレのチケットで、遊覧船(海から見る作品がある)に乗れたり、会場をつなぐ特別のシャトルバスを使えるのは嬉しい。あいちトリエンナーレでは、地元の交通機関との協力やレンタサイクルなど試みたが、前回、今回ともに実現できなかった。
ガイドブックでも近代建築を紹介しているが、神戸の町にはまだまだポテンシャルがある。いろいろな建築があるが、KIITOの大空間を使うと、すごくカッコいいアートの展示ができるだろう。一方、神戸ビエンナーレは脱「現代美術」の方向性なので、今後どこまで広げるか、あるいはどこかで止めるか、にも興味がある。
写真(上から):コンテナアート、安蔵隆朝《Light flower of Two faces》、高架下のアート、萬代基介《都市のリビングルーム》」

2013/11/03(日)(五十嵐太郎)

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あいちトリエンナーレ2013 記者座談会 上・下(『中日新聞』2013.10.28)

トリエンナーレの終了翌日とその次の日、二日間にわたって、『中日新聞』に、五名の記者による総括の座談会が掲載された。地元の批判的な意見もあることを伝えようとしたものと思われるが、編集がバランスを欠き、全体としてトリエンナーレの酷評に近い印象を与えるものだった。むろん、作品や内容についてはあれこれ言われてきたし、今回のようなテーマだと、そういう賛否が出るのは当然だと思っていたが、残念ながら、この座談会は事実誤認、取材不足、個人的な印象による決めつけが多く、看過できない。特に記者E(個人名は特定されていない)は、著しく誠意を欠いたこき下ろしを繰り返し、展示のレビューを装った国際芸術祭の全否定である。ゆえに、筆者はtwitterの連投を通じて、反論を行ない、togetterでも5万に近い閲覧数となり、大きな反響を呼んだ(http://togetter.com/li/583137)。またパフォーミングアーツ統括プロデューサーの小崎哲哉も、10の事実誤認を指摘する「中日新聞5記者への公開質問状」を「Realtokyo」のウェブサイトに掲載した。なお、その後、筆者は『中日新聞』に反論を書けるということで寄稿したが、書き直しを要求され、向こうの要望に合わせて、反論を修正するのもおかしいと考え、原稿の掲載をあきらめた。

2013/10/29(火)(五十嵐太郎)

くらし中心~「かたがみ」から始まる part3「食のかたがみ展 だし」

会期:2013/10/11~2013/12/25

無印良品有楽町 2F ATELIER MUJI[東京都]

有楽町の無印良品、ATELIER MUJIにて、くらし中心~「かたがみ」から始まる part3「食のかたがみ展 だし」を見る。石上純也事務所出身の萬代基介による会場構成だ。薄いベニヤの天板の丸みおびた小さな台が群島のように散らばり、その上に「だし」に関するモノや解説がある。100近い小さなテーブルは、すべて異なっており、床に落ちる影が美しい。

2013/10/28(月)(五十嵐太郎)