artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
想像ラジオ
発行日:2013/03/02(土)
いとうせいこうの小説『想像ラジオ』は、聴くことの物語である。震災後、生き残ったものを取材したドキュメントやノンフィクションは今後も膨大につむがれるであろう。だが、亡くなったものたちのもう語ることができない声を聴くことは、文学やアートにこそ可能だ。『想像ラジオ』は音楽的であり、音楽の力も使い、読者を受信機に変える。
2013/11/13(水)(五十嵐太郎)
ヨッちゃんビエンナーレ2013
会期:2013/11/10~2013/11/24
大阪造形センターのヨッちゃんビエンナーレ2013を見る。キュレータの加藤義夫さんが企画した二回目にして、おそらく世界で一番小さなビエンナーレである。愛知芸文センターの公募展、アーツチャレンジにも彼が関わっていることから、アーツチャレンジで選ばれた荒木由香里、植松琢磨、福田良亮らが参加している。
2013/11/10(日)(五十嵐太郎)
鉄道芸術祭 vol.3 松岡正剛プロデュース「上方遊歩46景~言葉・本・名物による展覧会~
会期:2013/10/22~2013/12/25
京阪電車なにわ橋駅「アートエリアB1」[大阪府]
京阪なにわ橋駅アートエリアB1の鉄道芸術祭「上方遊歩46景」を見る。松岡正剛のプロデュースによるもので、さまざまな場所についての「言葉・本・名物による展覧会」だ。パネルではなく、天井に届く白い円柱を林立させ、表面に言葉、裏面にモノや本を展示する会場構成のインスタレーションがよかった。
2013/11/10(日)(五十嵐太郎)
あなたの肖像──工藤哲巳 回顧展
会期:2013/11/02~2014/01/19
国立国際美術館[大阪府]
国立国際美術館の工藤哲巳回顧展「あなたの肖像」を鑑賞した。これまで断片的に青森や国立国際などで何度も彼の作品を見たが、初期のアンフォルメル風から、アンデパンダンの「反芸術」、西欧でのヒューマニズム攻撃、70年代の内省化、そして晩年の日本社会を問う作品まで一同に集まると、力強く、壮観である。これだけ大量の男根が陳列される展覧会もそうないだろう。一時のネタではなく、生涯こだわったモチーフであることがよくわかる。筆者がイメージする日本のどろどろとした情念的な前衛芸術家そのものだ(女性なら草間)。今回の展示で、千葉県房総の鋸山の岩壁に高さ25m近い巨大な男根/サナギのレリーフも制作したことを初めて知った。もうひとつ驚いたのが、カタログの分厚さである。640ページくらいか。展示作品だけではなく、巻末にレゾネとなる「工藤哲巳総目録1955-1988」も付しているからだ。なお、常設では、彼に関心をもったマイク・ケリーとマッカーシーの作品も紹介している。
2013/11/10(日)(五十嵐太郎)
フェスティバル/トーキョー13 オーバードーズ:サイコ・カタストロフィー
会期:2013/11/09~2013/11/13
池袋西口公園[東京都]
東京芸術劇場のアトリウムには、椿昇の巨大バルーンによる、金色の牛の頭をかたどる作品が浮かぶ。池袋の西口広場では、船のような、尖った切妻屋根の民家のような、竹による大きなセットが水面の上に組まれ、男たちがよじ登って「オーバードーズ:サイコ・カタストロフィー」が催された。これは1883年のクラカタウ火山の噴火と津波で3万6千人が亡くなった出来事に着想をえて制作された神話、儀式的な作品である。見るからに危険な身体運動ゆえに、緊張がゆるむことがない、エネルギッシュなパフォーマンスだ。あいちトリエンナーレのジェコ・シオンポも、インドネシアだったが、彼らも壮大でパワフルである。
写真:上=オーバードーズ、下=椿昇の巨大バルーン
2013/11/09(土)(五十嵐太郎)