artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
アイチのチカラ! 戦後愛知のアート、70年の歩み
会期:2013/11/29~2014/02/02
愛知県美術館[愛知県]
愛知県美の「アイチのチカラ」展を見る。あいちトリエンナーレ・ビギンズ、あるいはエピソード1と言うべき内容で楽しめる。当時の桑原知事の強い意向で、1950年代に県美の前身、60年代に県芸を創設し、続いて2つの芸大も登場した。戦後の蓄積があいちトリエンナーレを実現できる環境したことがよくわかる。『中日新聞』の酷評座談会によれば、愛知県にとって現代美術はよそから持ってきた、地域を疲弊させるものらしいが、この展示を見ると、自ら培った歴史と背景がある。特に奈良美智、杉戸洋、森北伸、小林孝亘らに影響を与えた県芸の櫃田伸也の絵が印象に残った。またあいちトリエンナーレも神田知事が始めたものだが、政治が文化にもたらす影響力の大きさがうかがえる。
2013/12/04(水)(五十嵐太郎)
かぐや姫の物語
会期:2013/11/23
高畑勲『かぐや姫の物語』を見る。CGではなく、手描きを追求したものだが、アメリカ/ディズニーとは違う方法論で、生き生きと絵に命を吹き込むことができることに、アニメの希望を感じた。建築史の教科書に出てくる寝殿造が生きられた空間になっていた。誰もが知っている昔話を現代的な文脈で甦らせる手腕も恐れ入ったが、天真爛漫だが特別な女性というキャラ設定はジブリのテンプレートかもしれない。
2013/12/03(火)(五十嵐太郎)
フェスティバル/トーキョー13 F/T13イェリネク連続上演 光のない。(プロローグ?)
会期:2013/11/30~2013/12/08
東京芸術劇場シアターウエスト[東京都]
宮沢章夫演出の「光のない。(プロローグ?)」を観劇した。女優たちが次々と言葉を発していくが、F/T13から与えられた難題=イェリネクの難しいテキストをよくもまあ演劇化したものだと感心する。同じ脚本をもとに、小沢剛が展覧会の形式によって一切音としての言葉を排除したのに対し、宮沢は逆に徹底的に声による言葉にこだわる。彼によれば、語りの私は「死者」とみなしたという。
2013/12/01(日)(五十嵐太郎)
植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ ─写真であそぶ─
会期:2013/11/23~2014/01/26
東京都写真美術館 3階展示室[東京都]
東京都写真美術館の「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ」展は、日本とフランス、ともに20世紀を撮影した写真家である。が、前者は計算された構成的な写真によってシュールな作品をつくり、後者はまさに動きの瞬間を撮るという意味で、二人の手法は対照的だ。ちなみに、ジャックの撮影した年齢をみると、10歳頃からの写真が展示されており、20世紀初頭という時期を考えると、これは相当に裕福な家でないと不可能だと思う。
2013/12/01(日)(五十嵐太郎)
真夏の奇譚集
会期:2013/11/29~2013/12/01
もうひとつ公募プログラムでは、台湾のジョン・ボーユエン作・演出の「真夏の奇譚集/シャインハウス・シアター」を観劇。Jホラーの影響を受けた女性像で、現代の都市伝説的なエピソード群だった。が、出所なき噂でなく、体験者への取材をもとにしたものらしい。手持ちカメラで、ライブ投影する演出が効果的である。
2013/11/30(土)(五十嵐太郎)