artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

ゼロ・グラビティ

会期:2013/12/13

映画『ゼロ・グラビティ』は、ほとんどひとりのシーンだけで、どうやって90分を持たせるかと思ったら、危険につぐ危険のジェットコースター・ムービーになっており、重力がある地球に帰還する最後まで、緊張感を維持していた。最近、CGを使う映画はお決まりの超人戦闘シーンによる都市の破壊ばかりで食傷気味だったが、こんなシンプルな設定で無重力の空間を描く表現の可能性があるのだと、新鮮に感じた。これは「揺れる大地」どころか、立つべき大地すら存在しない静寂な闇の無限空間である。宇宙=死の世界(娘の喪失)での絶望から、結果はともかく最高の旅という肯定を経て、生命の世界への帰還。よろめきながら大地に足を踏みしめるまでの90分。
重力がないことを徹底的に描きながら、逆説的に重力の意味を思い起こさせる『ゼロ・グラビティ』を鑑賞した後は、今までの/これからの宇宙を舞台とするほとんどのSFの見え方が変わってしまう。また全映画と言ってよいが、地球上の映画はSFであるないにかかわらず、すべて重力が自ずと表現されていたのだ。つまり、コンピュータが映画内のあらゆる動きを計算しようとすれば、あるいは映画だけの情報をもつ地球外の知的生命体がいたとして、必ずや重力の法則を見出す。以前、アーティストの彦坂尚嘉と人間は最初にどうやって直角を発見したかを議論したとき、僕の考えのひとつは重力が垂直→直角の概念を普遍的に見出させるというものだった。

2013/12/15(日)(五十嵐太郎)

Lisbon Triennale Millenniumbup Lifetime Achievement Award

リスボン建築トリエンナーレ2013の生涯業績賞の審査員をつとめ、公式ホームページで、その結果としてケネス・フランプトンに決定したことが告知される。非西洋圏にとっても批判的地域主義の概念は重要ということで、最後の決戦では彼を推した。
http://www.trienaldelisboa.com/en/#/news/vencedor_premio-carreira
こちらは審査員名も記載。
http://www.close-closer.com/en/programme/lifetime-achievement-award/about

2013/12/15(日)(五十嵐太郎)

映秀東村

[中国・四川省]

映秀東村は、チベット系などが暮らす、現地復興ニュータウンだった。伝統様式を意匠に組み込み、映画のセットのような街並みである。この一角には、倒壊した中学校がそのまま保存されていた。付近の大地震紀念館は、地下に降りて震災の展示を見た後、今度は上に登って、復興計画の展示が続くという興味深い空間構成である。こうしたニュータウンや震災遺構の整備は、震災後、およそ2年でほとんど成し遂げられており、すさまじいスピードである。日本とは違う、国家主導の強さだろう。午後は世界遺産になっている都江堰を訪れ、二千年前の治水工事を見学した。

2013/12/12(木)(五十嵐太郎)

四川大地震被災地

[中国・四川省]

四川大地震の被災地へ。北川のエリアは、震災、川の氾濫、土砂崩れが重なり、現地再建が断念されたため、廃墟化された街が丸ごと保存され、今は観光地になっている。近くの地震紀念館は、社会主義リアリズムの彫刻や絵画、あるいはヒロイックな音楽などを動員し、救助や復興の様子を紹介しつつ、復興を通じた国家の団結を提示していた。そのほか、街ごと移住したニュータウンの北川永昌や現地再建の少数民族の集落などもまわる。いずれも真新しく、テーマパークのように、伝統的なデザインを建築の外観に散りばめていた。

2013/12/11(水)(五十嵐太郎)

重慶市建築

[中国・重慶市]

飛行機で重慶へ。山に囲まれ、激しく凸凹の多い地形でほとんど平地がないところに高層マンション群が続く風景は、香港を想起させる。崖地ゆえに、建物の屋上が上部の道路から続くテラスになるなど、独特な建築が生まれ、メイド・イン・重慶のリサーチができそう。重慶大学のレクチャーでは、筆者の関わった21世紀の展覧会を軸に、日本の若手建築家の動向を紹介した。

2013/12/10(火)(五十嵐太郎)