artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2013 最終日

[愛知県]

最終日、岡崎の各会場をまわってスタッフらに声がけを行なう。松本町では旧料亭の小花を見学する。今回は使われなかったが、魅力的な建築であり、まだまだこんなにポテンシャルを持っているのだということを知る。松應寺にて、松本町の人たちと、今後のまちづくりの話を行なう。ここも長者町と同様、トリエンナーレを契機に新しい活気が生まれそう。
名古屋にて、七ツ寺共同スタジオの渡辺英司展「名称の庭」を見る。図鑑を切り抜いて床いっぱいにつくられた紙の花畑。その後、名古屋市美術館、行列ができていた長者町エリアや納屋橋、中央広小路ビル、愛知芸術文化センター、すべての会場をまわる。終了時、10階であいちトリエンナーレの事務局、キュレーター、スタッフらが並び、御礼と拍手で最後の客を送り出す。
第二回のあいちトリエンナーレ2013は、最新アートのショーケースでいいとされる芸術祭にはめずらしく、強いテーマ性を掲げ、単に1回目の繰り返しにするのではなく、楽しい、美しいだけではない、アートの異なる側面を多くの人に知ってもらう機会となった。数字を気にしすぎない方がよいと言ったが、入場者数が激減することがなかったことは重要だと思う。もし激減していれば、もうテーマ性はやるなという話になる。が、いま、日本で向き合うべきテーマがあるときに、それを避けては、社会や時代の変化とともに進化・成長してきた現代美術の状況も伝わらない。1回目は始めることが重要だが、2回目は変わることができることを示せる。3回目は観客として楽しみたい。

写真:上から、旧料亭「小花」、松應寺、渡辺英司展「名称の庭」

2013/10/27(日)(五十嵐太郎)

あいちトリエンナーレ2013作品 ヤノベケンジ「太陽の結婚式」挙式

愛知芸術文化センター 10階 愛知県美術館[愛知県]

台風の恐れもあったが、サンチャイルドのおかげか、晴れた名古屋で、太陽の結婚式に参列した。サイン会で来ていたヤノベケンジも同席する。やはり、ユニークな結婚式であり、この作品は式が行なわれるときに最も輝く。式を挙げたのは教え子だったので、オノ・ヨーコの「生きる喜び」と、ウィッシュ・トゥリーが足元にあるテレビ塔4階の披露宴にも出席した。ここからのセントラルパークの眺めもいい。ヤノベケンジに続き、オノ・ヨーコの作品も結婚式を祝福するかたちになった。

2013/10/26(土)(五十嵐太郎)

あいちトリエンナーレ2013 パブリック・プログラム クロージングイベント あいちトリエンナーレ2013に関する「Q&A」

名古屋市美術館 2階 講堂[愛知県]

名古屋市美術館にて、クロージングイベント「あいちトリエンナーレ2013に関するQ&A」を行なう。キュレーター、プロデューサーらがずらりと並び、トリエンナーレでできたこと、できなかったことを語り、質疑を受ける。あいちトリエンナーレ2013の来場者数は微増したが、継続するにあたって気をつけるべきことの質問に対し、あまり数字を気にしすぎないのがいいと答えた。数字が目的化し、これに縛られると、なんのために国際展をやっているのかわからなくなるからだ。アーキテクトの武藤隆が前回との作品数の比較表を制作していた。全体としては微増である。が、長者町は35→16と大幅減に対し、納屋橋の9→14、新規の岡崎の+15で取り返している。もっとも、長者町は前回のトリエンナーレ2010を契機にいろんな店が増え、3年前に比べて、にぎやかさが出たように思う。また長者町からのおもてなしとして木のベンチをあちこちに配したり、アーティストによるカフェ・スペースもつくられた。さらに『あいち建築ガイド』を手に歩けば、いろんな渋ビルも楽しめる。現存せずとされた村野藤吾設計の建物が、実はここにあったことも発見された。作品=図だけではなく、地も楽しむことで、違うかたちでのヴォリュームを感じることができる。そのための手引きは用意した。名古屋市美も作品減だが、これは前回と展示方法を変えること、会場ごとのメリハリをつけることを意図した結果である。青木淳+杉戸洋による試みは、外構も含め、建物全体を作品化すること。他のどの芸術祭でもなされなかった切り口だろう。芸文のさかえ原発と同様、最大級の作品である。作品数ではなく、空間を楽しみたい。

2013/10/25(金)(五十嵐太郎)

喫茶店「丘」

[愛知県]

噂に聞いていた岡崎のディープな喫茶店「丘」にて、昼食。masayoshi suzukiギャラリーのすぐ近くである。なるほど、これは大竹伸朗のインスタレーションが内装になったような空間だ。広くはない店内で、映画音楽とヴァン・ヘイレンが同時に鳴っていたのも驚きである。店主が手づくりでつくり上げた、アート作品としての喫茶店だ。

2013/10/24(木)(五十嵐太郎)

加藤マンヤ展 as far as possible

会期:2013/10/12~2013/11/11

Masayoshi Suzuki Gallery[愛知県]

岡崎のmasayoshi suzukiギャラリーを訪問した。加藤マンヤ展では、日用品に手を加えたオブジェの数々が、新しいモノの関係性を示す。同時に展示されているstudio velocityのシビコ屋上のプロジェクト「roof」の模型がすごい。やはり、ほとんど糸のグリッドが見えない。オカザえもんのフィギュアも、ここで予約受付している。岡崎は訪れるたびに、オカザえもんがあちこちに増えていることを実感する。ちなみに、ゆるキャラグランプリ2013にて、オカザえもんに投票したが、これだけ多様なゆるキャラが日本各地に存在するのに、ほとんどが同じ特徴をもつ。身体の丸っこい曲線だ。かわいらしさの媚を売ることと、着ぐるみで人が内部にいることを忘れさせることが目的だろう。しかし、オカザえもんだけが違う。アートなのだ。

写真:上・中=加藤マンヤ展、下=studio velocity《roof》模型

2013/10/24(木)(五十嵐太郎)