artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

SANDWICH

[京都府]

京都へ。アシスタント・キュレーターの堀江さんとともに、あいちトリエンナーレ2013に参加する名和晃平の拠点、工場をリノベーションしたSANDWICHを訪問する。昨年から実験を繰り返したサイトスペシフィックな名和ワールド作品の方針が決まり、制作進行も確認した。そして今回のための実験装置を見せていただく。もともと名和は、理系的なアーティストだが、これはなるほど理科の教室、あるいは夏休みの自由研究のようだ。

2013/05/05(日)(五十嵐太郎)

愛知産業大学 言語・情報共育センター

[愛知県]

studio velocityが手がけた愛知産業大学 言語・情報共育センターを見学する。薄くて白い天井をはりめぐらせ、スチレンボードの模型がそのまま建築になったようだ。大学の校舎に囲まれた立地環境は、彼が所属していた石上純也のKAIT工房と似ているが、現地を訪れると、地面が大きく傾斜し、それに合わせて屋根も一定に傾き、それが大きな違いをもたらしている。晴れの日には、室内と中庭が一体化し、気持ちがいい場を提供していた。

2013/05/04(土)(五十嵐太郎)

あいちトリエンナーレ2013 現代美術作品第1号「昭和時代階段」

会期:2013/04/27~2013/05/10

伏見地下街とその地上出入口(名古屋市中区内)[愛知県]

あいちトリエンナーレ2013の最初のプロジェクト、打開連合設計事務所による伏見地下街のリノベーションを研究室で手伝う。東北大の五十嵐研からは11名が参加した。彼らが得意とするブループリントのシリーズで使う手法、すなわち青く塗り、稜線に沿って白いラインを引いていく作品である。またこの地下街が誕生した昭和時代をテーマに掲げている。制作途中からテレビや新聞など、各種のメディアが紹介していたように、実際、フォトジェニックな作品であり、見る角度によって透視図法が像を結び、実空間に異空間が重なるため、さらに視点を移動しながら見ると面白い。また夜にはキュレーターや長者町のスタッフらが、制作ボランティアに食事をふるまい、苦労をねぎらう。リノベーション・プロジェクトは、ほぼ完成し、すでに見ることができる状態になっているが、あいちトリエンナーレが始まる8月まで隠される秘密の部屋もある。また、オープニングの直前絵が少し追加されるという。なお、鑑賞は夜に青く光る出入口の状態もおすすめである。

2013/05/03(金)(五十嵐太郎)

山形県寒河江市

[山形県]

仙台から山形に向かい、寒河江へ。黒川紀章の初期の傑作、寒河江市役所は、大きく張り出す執務のヴォリュームを4本のコアから吊る、ハイテクのごときダイナミックな構成と、岡本太郎や天童木工がコラボレーションした密度の高い屋内の空間をもつ。メタボリズムの思想を表現しつつ、30代前半でこれを成し遂げたのは見事である。市役所はいまも現役で使われているが、免震工事を行い、将来も残りそうだ。また郷土館では、明治建築の旧西村山郡役所と旧西村山郡会議事堂が移築されている。近代から1960年代まで、地方都市がこれらの前衛的な建築を実現させていたのが興味深い。

写真=黒川紀章《寒河江市庁舎》

2013/04/30(火)(五十嵐太郎)

七ヶ浜町遠山保育所

[宮城県]

3.11以降の被災地における公共建築のコンペで最初に竣工し、すでに使われ始めた、高橋一平による七ヶ浜の保育所を訪れる。自然をとり込む矩形の中庭という建築的なアイデンティティを維持しつつ、ワークショップや諸条件から外の輪郭や部屋の配置を決めていく。それによって背の低い回廊に、さまざまな場や空間をつくる。銀色のステンレスシートの外壁に一瞬驚くが、まわりの風景を写し、溶け込んでいた。

2013/04/29(月)(五十嵐太郎)