artscapeレビュー
市民公開講座「金沢学」第1回「建築文化からみた金沢の近代化」
2013年05月15日号
会期:2013/04/13
北國新聞社 20階ホール[石川県]
北國新聞社にて「近代化支えた偉人学ぶ」市民公開講座「金沢学」の第一回として「建築文化からみた金沢の近代化」で基調講演を行ない、その後、水野一郎さん、川上光彦さん 、小倉正人さんらとパネル討議。実は筆者にとって金沢での講演はやりにくい。小中高と12年も暮らしながら、建築を学ぶ前で何も見ていなかった、ぼんくらの時代を思い出すからだ。いまなら初めての都市でも、どう見ればいいかすぐにわかるが、金沢は初見の関係になることを許してくれない。が、開き直って、講演ではいわば外国人として金沢を語ることにした。金沢生まれの谷口吉郎論をメインとしつつ、何にも似ていない尾山神社神門、明治時代につくられ、いまもよく残る近代の教育と軍関係の施設などを紹介する。また谷口吉郎と息子・吉生の共作、玉川図書館(これは近代と現代をつなぐリノベーションでもある)から、金沢に登場した吉生の鈴木大拙館、ニューヨークのMoMAの増改築へ、そしてSANAAの金沢21世紀美術館からルーブル美術館のランス別館へ、の二系統を提示し、世界水準の建築につながっていることを論じた。ちなみに、金沢出身では、市長にまでなった片岡安もいる。彼が都市計画や法規、実業界に影響をもったのに対し、谷口吉郎は機械(工場を研究したり、大学院では佐野利器に学ぶ)と美(記念碑、美術館、九谷焼の窯元出身、伊東忠太にも師事)の間を往復しつつ、いずれも純粋ゆえに魅せられ、法規ではなく、生活美の延長による街並みを唱えた。筆者の立場も後者側に近い。
写真:上=《尾山神社》、下=《玉川図書館》
2013/04/13(火)(五十嵐太郎)