artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

土木デザイン競技 景観開花。9 公開最終審査会&トークセッション

会期:2012/12/08

東北大学青葉山キャンパス[宮城県]

日本国内唯一の土木系アイデアコンペ、景観開花の審査を今年もつとめた。テーマは「未来へつなぐ防潮堤デザイン」である。石巻にジグザグの防潮堤をつくる予選トップ通過の社会人の案は伸び悩み、佳作どまり。逆に予選ぎりぎりで通過した案「わたしのまちの堤防の家」(塩田一弥、江川拓未、根本周)のプレゼンテーションがよく、逆転で最優秀になる波乱含みだった。雄勝の漁村の集落に、海が見えなくなる大きな防潮堤をつくる代わりに、小さなL字の厚いコンクリートの壁を数多く分散させ、それを利用して家や各施設などをつくるというもの。このコンペ9年目にして、東北大の建築チームが初の1位に輝いた。

2012/12/08(土)(五十嵐太郎)

国立新美術館開館5周年 リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝

会期:2012/10/03~2012/12/23

国立新美術館[東京都]

国立新美術館の「リヒテンシュタイン 華麗なる伯爵家の秘宝」展を見る。有名な画家ルーベンスの作品群はあるが、この展覧会は絵画より、むしろ当時絵と一緒に部屋を飾っていたであろう同時代の家具や工芸品も展示していることがよいと思った。美術館では、絵だけが切り離されて持ち込まれ、純粋芸術とされがちだが、現場では渾然としているからだ。とくに近世以前の作品は、場所が交換可能なホワイトキューブの抽象絵画とは違う。

2012/12/07(金)(五十嵐太郎)

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ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展

会期:2012/10/06~2012/12/16

パナソニック汐留ミュージアム[東京都]

パナソニック汐留ミュージアムのジョルジュ・ルオー展へ。「I LOVE CIRCUS」のタイトルとおり、彼が愛したサーカスにまつわる絵画を紹介するもの。フランスにおけるサーカスの全盛期に彼がそれを体験した時代性、サーカス小屋の様子もあわせて展示し、室内もそうした仕様でデザインされ、あるモチーフが生まれる社会背景や空間の体験が丁寧に説明されていた。晩年のルオーの作風は、道化師たちの悲哀にキリストのイメージを重ねる。

2012/12/07(土)(五十嵐太郎)

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名古屋市科学館

[愛知県]

名古屋市科学館を訪問した。展示は建築や都市計画に関するパートも含むが、竜巻ラボなど、実際に室内で自然現象を起すところは、改めて科学系アートと紙一重だと思う。グリッド状の都市計画のおかげで、遠くから巨大な球体が浮いているのがよく見える、話題のプラネタリウムは、休日だと朝から長い行列が生まれ、すぐに一日分のチケットがはけてしまうが、平日だとあっさりとに入ることができた。プログラムは興味深いものだったが、映像の冒頭で名古屋の街が完全に西欧風に表現されていたのには違和感をおぼえた。

写真:竜巻ラボ

2012/12/05(水)(五十嵐太郎)

公共建築から考えるソーシャルデザイン・鶴ヶ島プロジェクト2012

会期:2012/12/03~2012/12/08

渋谷ヒカリエ 8階 クリエイティブスペース 8/COURT[東京都]

渋谷ヒカリエの藤村龍至による「公共建築から考えるソーシャルデザイン・鶴ヶ島プロジェクト2012」展を見る。これまでも彼はワークショップを通じて、先鋭的な集団制作の形式を追求し、今回はついに自治体や住民など、実際のステークホルダーを巻き込む実践的な場を創出したとものと言えるだろう。東洋大の多くの学生を複数の班に分けながら、合議にもとづく、失敗しない、すなわち一定水準の建築のつくり方の形式を提示している。

2012/12/05(水)(五十嵐太郎)