artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
ローマ・ゲルマン博物館
[ドイツ、ケルン]
大聖堂の横に建つローマ・ゲルマン博物館は、戦時下に防空壕を掘っているときに発見された遺跡の上にかぶさるように建設されたものである。上からも見下ろせる吹抜けの地階では、オリジナルの高さで、当時のモザイクの床を展示していた。旧市庁舎前も発掘調査中であり、都市としてのケルンの起源がローマ時代までさかのぼることがよくわかる。
写真:地階。モザイクの床
2012/12/11(火)(五十嵐太郎)
ルートヴィヒ美術館
[ドイツ、ケルン]
水平のラインを屋根で反復するルートヴィヒ美術館は、隣接する垂直性が強い都市のランドマーク、ケルン大聖堂と好対照をなす。内部は、大階段を軸に左右に展示空間を振り分け、アメリカのポップアートとドイツ近代のコレクションがよく揃う。ドイツは東西が統合した後、ベルリンが文化の中心になっているが、それ以前はケルンがアートにとって重要な場だったことをしのばせる。ちょうど開催中だった企画の漫画展も面白い。
2012/12/11(火)(五十嵐太郎)
ヴァルラーフ・リヒャルツ博物館
会期:2012/08/31~2012/12/30
[ドイツ、ケルン]
ヴァルラーフ・リヒャルツ博物館の外観は、一見ただの四角い箱形の建物だけのように思われるが、展示物の性格から各階のプランが異なり(例えば、中世のフロアは十字型を強調)、また都市を望む開口を絶妙の位置に設けた大人の建築である。都市の文脈を読むウンガースが設計したもの。コレクションは中世から近代まで抱えるが、とくに中世の展示セクションがおもしろい。3Dの先駆など、作品の解説がなかなかしゃれている。
写真:上=展示室、下=外観
2012/12/11(火)(五十嵐太郎)
ケルン
[ドイツ、ケルン]
およそ20年ぶりに、ケルンの街を歩く。ゴシックの大聖堂は都市につきものだが、ロマネスクはしばしば田舎に存在しているから、都市でこれだけ多くのロマネスクの教会を見ることができるのは珍しい。実際、ホテルの窓からも大聖堂とロマネスク教会群の塔が目立つ。中世に栄えたケルンらしいスカイラインだ。クリスマスという季節柄、簡易建築の出店によるマーケットが街のあちこちに出現し、これも観光の対象になっているらしい。とくにノイマルクトは小さな家型の屋根が並び、かわいらしい。
写真:上=ホテル窓から見える大聖堂とロマネスクの教会、下=ノイマルクト
2012/12/11(火)(五十嵐太郎)
せんだいスクール・オブ・デザイン 2012年度秋学期 PBLスタジオ1メディア軸 フィールドワーク「スローウォーク」
会期:2012/12/09
仙台市内[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザインのメディア軸スタジオのメンバーで、スローウォークを実践した。これは受講生のひとり、篠原さんが普段からやっているものだが、仙台駅から国分町まで四時間!かけて歩く試みである。いや、超低速で、止まっているかのように歩くというべきか。この日は雪が降っていたが、アーケードで行ない、時速300mくらいだった。確かに世界の見え方が変わる。アーケードでは、消費者が絶えず流れる川のように歩き続ける。そして立ち止まって、歩行者に声をかける売り子たち。だが、そのどちらでもないスローウォーク。ポケットウィスキーを片手に実践者は、微動する石のような存在となり、目をつぶっていても人がぶつからない。あまりの遅さゆえに、すべての看板、広告、細部を確認できる絶対的な速度である。スローウォークを運動として考えると、シチュアシオニストの漂流などにも通じる、批判的な都市への介入としても興味深い。
2012/12/09(日)(五十嵐太郎)