artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
「WHITE 桑山忠明 大阪プロジェクト」展
会期:2011/06/18~2011/09/19
国立国際美術館[大阪府]
国立国際美術館の「WHITE 桑山忠明 大阪プロジェクト」展。大きなスペースに多くの作品を置くのではない。例えば、片面の壁だけを使う。ここまで展示の余白をとらせてもらえるとは、なんとも贅沢な展示だ。ある意味ではほかの作品の排除であり、共存不可能ということだが。ほとんど白い(しかし、違う)表面の作品が反復しつつ並び、むしろそれを包み込む空間が作品化されている。
2011/07/23(土)(五十嵐太郎)
開館10周年記念特別展「民都大阪の建築力」
会期:2011/07/23~2011/09/25
大阪歴史博物館[大阪府]
大阪歴史博物館にて、建築史の学芸員、酒井一光さんの企画した「民都大阪の建築力」展の初日へ。各建築家の提案を一同に並べた大阪市中央公会堂のコンペの展示、大阪城の新築、百貨店の底力、建築物ウクレレ化保存計画など、見所満載の入魂企画である。初日は、通天閣ロボットもやってきて、会場をにぎわせていた。
2011/07/23(土)(五十嵐太郎)
竹中工務店《ザ・千里レジデンス》《関西大学高槻ミューズキャンパス》
[大阪府]
大阪にて、竹中工務店が手がけた新しい物件を2つ見学した。千里駅周辺の再開発。プロジェクトの一部、ザ・千里レジデンスは、タワーマンションにはせず、庭やアートのある豊かな共有空間や、柱が邪魔しない眺望などを備えることで、差別化している。外壁を柱が分節しないために、透明感にあふれ、水平のラインが強く、オフィスのようにも見える。かつてのニュータウンの行方を示唆するプロジェクトといえよう。関西大学高槻ミューズキャンパスも、駅の真横の再開発だが、なんと小中高大!のハイパースクールである。少子化の時代に強気の戦略だ。それだけではない。さらに地域に開かれた児童図書館、安全ミュージアムが一体化した複合施設である。複雑なプログラムだが、外観は統一感のあるクラシックな見えで、都市に対するゲートのようだ。一方、内部は基準階がなく、ほとんど異なるプランが展開し、色彩計画でも場の多様性を演出する。
2011/07/22(金)(五十嵐太郎)
建築家フォーラム第102回「保坂猛 西田司 2人展~スピードスタジオ以降の展覧会~」
会期:2011/07/11~2011/07/19
INAX:GINZA[東京都]
もともと横浜国立大学出身の二人はスピードスタジオを結成し、事務所勤務を経由せず、いきなりデビューしたが、現在はそれぞれに活動している。今回はその二人を組み合わせた好企画。保坂は部屋いっぱいに浮かぶ風船にこれまでの手描きのスケッチをつけて、浮遊させる印象深い空間である。西田は現代のさまざまな住まいのあり方を所員とともに提示し、細かい造作の模型群を並べた。二人の方向性の違いもよくわかる展示だった。
2011/07/19(火)(五十嵐太郎)
せんだいスクール・オブ・デザイン ARP2 S-meme#2 山内宏泰氏レクチャー
会期:2011/07/16
東北大学片平キャンパス[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザインのメディア軸/五十嵐スタジオにて、津波で自らも家を失い、被災した気仙沼のリアスアーク美術館の学芸員、山内宏泰のレクチャーを行なう。被災地をまわっているときにお会いし、当事者性のある文化論でもっとも強度のある人と考えていたが、想像以上に素晴らしい内容だった。レクチャーの前半は気仙沼の被害状況を報告しつつ、博物館の使命として被災地の記録作業を行なっていること。後半は雑誌『S-meme』の特集「文化被災」に関連して、被災後に地方の小さな文化施設が置き去りにされていく厳しい状況について語る。彼は、いま文化やアートに何ができるかで悩むのではなく、すべきことは何かを考えるべきだという。そして津波も文化であり、その被害を後世に伝えるために、今こそ文化やアートは踏ん張るときなのだと述べている。
2011/07/16(土)(五十嵐太郎)