artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

パウル・クレー展/「路上──On the Road」展

東京国立近代美術館[東京都]

会期:2011/05/31~2011/07/31(パウル・クレー展)/2011/05/17~2011/07/31(「路上──On the Road」展)
油彩転写、回転、切断、再構成、両面など、カテゴリーごとに、作品制作の方法論を示す展示のスタイルは、レンゾ・ピアノの設計による、ベルンのパウル・クレー・センターで見た常設を踏襲したものか(実際、多くの作品がここから貸し出されている)。クレーにとっての部分と全体の関係は、通常の画家とかなり異なることがうかがえて興味深い。西澤徹夫建築事務所による会場デザインもおもしろかったが、来場者が多過ぎて、ゆっくり空間を体験できなかったのは残念だった。
常設の特集展示「路上──On the Road」は、ともにNYの交差点を撮影した宮本隆司《the crossing》や奈良原一高《ブロードウェイ》など、都市観察や表象の手法がいろいろと並んでいた。ルシェーの『サンセット・ストリップ沿いのすべての建物』や木村荘八の『アルバム・銀座八丁』の超横長の連続写真を意識した冊子が前衛的だった。

2011/06/26(日)(五十嵐太郎)

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名和晃平─シンセシス

会期:2011/06/11~2011/08/28

東京都現代美術館[東京都]

2003年、筆者が審査員をつとめたキリンアートアワードで彼が受賞したとき(当時はまだ食えなくて、バイトをやっていた)、受賞展を担当していたので、ついに都現美で個展を開催したことは感慨深い。これまで見てきた懐かしい作品のほか、「PRISM」のシリーズは当初に比べて、さらに精度に磨きをかける一方、新しく二重化のモチーフが出現し、情報化時代の造形のあり方の先端を切り開く。また各部屋の空間のつくり方にも細かい気配りがなされていたことにも感心させられた。
ちょうど常設の特集展示では、若いときから渦の生成にこだわり、ドローイング・アニメーションを展開する石田尚志がとりあげられていたが、名和展との同時開催は比較できて興味深い。石田がアナログ寄りで、名和がデジタルな感性に近いことがよくわかる。理科系アートでありながら、センシュアルな名和作品は、建築系にもおすすめだ。

2011/06/26(日)(五十嵐太郎)

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やなぎみわステージトレーラープロジェクト「日輪の翼」

会期:2016/06/24~2016/06/26

横浜赤レンガ倉庫イベント広場[神奈川県]

屋外ゆえに、風の状態にハラハラしながらの観劇となった。強風による中止とはならなかったものの、残念ながら完全版での演出でもなかった。もっとも、各地を巡回してきた、ど派手な変形トレーラー、御柱=ポール、ライブ演奏が、中上健次の聖と俗の世界を彩る。ただ、多くいる俳優の声をマイクで拾いスピーカーで流すため、発話者の位置がすぐにわかりにくいのが気になった。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)

JCDインターナショナル デザインアワード2016 公開審査

JCDデザインアワードの公開審査をオブザーバーとして見学する。歴代理事が審査員という豪華な顔ぶれだった。数カ月のディスプレイだと審査の対象にならず、1年以上存在していることが条件らしい。ファイナルの3作品は建築家によるもので、ゼロ年代以降の傾向が続いている。DSAの審査と同様、最後は社会・時代か、造形力かの択一の勝負となり、ここでも前者が選ばれた。中村拓志によるか細い柱で大きな屋根を支える構造のレストランは建築的にすごかったが、谷尻誠による本棚のある宿泊施設、《BOOK AND BED》が勝利した。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)

シンポジウム「アート × 建築 × 震災後」(大木×彦坂尚嘉×五十嵐)

会期:2011/06/25

Art Center Ongoing[東京都]

乱れた自分の部屋をそのまま会場に持ち込んだかのような、吉祥寺の大木裕之展「うちんこ!」に連動して開催されたトークイベント。大木さんは東京大学の建築学科の先輩にして映像作家である。今回初めて、彼の街の風景を扱う卒計から初期の映像作品「松前君」シリーズに展開していたことを知った。そして卒計では、槇文彦さんと三時間議論し、君のは建築ではないと言われたらしい。なお、卒論には映像も使用したという。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)