artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
palla/河原和彦 作品展「Natures─PALLALINKの10年」
会期:2013/10/22~2013/11/10
海岸通ギャラリー・CASO[大阪府]
pallaこと河原和彦と、彼を中心とするアーティスト・ユニットPALLLINKの、活動10年を記念した大規模展。河原の作品の特徴は、1枚の写真を幾重にも反転し重ねることにある。シンプルな反復作業から生まれるイメージは、驚くほど幻惑的で豊穣だ。当初は都市をモチーフにしていたが、その後、緑や海などの自然環境にまで範囲を拡張し、多様な作品を発表している。本展では、広大な3つの展示室を使用し、河原とPALLALINKの活動を網羅的に紹介していた。また、2点の新作のうち映像インスタレーション《運ぶ人/引き摺る男》(画像)は、ストーリーがある映画的な作品だった。この新機軸が今後どのように展開するのか楽しみだ。
2013/10/23(水)(小吹隆文)
プレビュー:注目作家紹介プログラム チャンネル4 薄白色の余韻 小林且典 展
会期:2013/11/02~2013/12/01
兵庫県立美術館[兵庫県]
兵庫県立美術館が4年前から始めた注目作家紹介プログラム「チャンネル」。その第4弾として、兵庫県龍野市出身の作家・小林且典を取り上げる。小林の作品といえば、イタリア留学時に修得した蜜蝋鋳造による、皿、瓶、壺などのブロンズと、それらを自作レンズのカメラで撮影した静物写真が挙げられる。本展では天井高7.2メートルの空間を生かして、床面に大量のブロンズと木彫を配置し、壁面にはカラープリントの新作とモノクロプリントを展覧。また、フィンランド滞在以来ラインアップに加わった木彫とブロンズの新シリーズも紹介される。
2013/10/20(日)(小吹隆文)
プレビュー:Exhibition as Media 2013蓮沼執太 展「音的→神戸|soundlike 2」
会期:2013/11/02~2013/11/20
神戸アートビレッジセンター[兵庫県]
音楽作品のリリース、ライブパフォーマンス、展覧会、ワークショップ、イベント制作、CM、映画への楽曲提供など、音楽を中心に幅広く活動する蓮沼執太が、関西初個展を開催。今年2月にアサヒアートスクエア(東京)で行なった初個展「音的」の出品作品に加え、アフリカ・ナイロビや神戸・新開地をフィールドワークして制作した新作を展覧。ギャラリー、シアター、スタジオを備えた会場の特性も生かし、彼の「音的」世界を神戸から発信する。
2013/10/20(日)(小吹隆文)
プレビュー:あなたの肖像 工藤哲巳 回顧展
会期:2013/11/02~2014/01/19
国立国際美術館[大阪府]
1994年以来、約20年ぶりに開催される工藤哲巳の大回顧展。日本初公開を含む代表作約200点が展示されるほか、1962年の「第14回読売アンデパンダン展」に出品された伝説的作品《インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生》(ウォーカー・アートセンター蔵)が50年ぶりに帰国、さらには多数の記録写真と関連資料、ハプニングの秘蔵映像(初公開)と話題満載の内容だ。規模的にも前回の1.5倍に拡大しており、工藤展の決定版となるだろう。
2013/10/20(日)(小吹隆文)
中原浩大 自己模倣
会期:2013/09/27~2013/11/04
岡山県立美術館[岡山県]
筆者にとって中原浩大は、1980~90年代を代表するスター作家であり、同時に巨大な謎であった。残念ながら彼の1980年代の仕事には立ち会えなかったが、1990年代以降は多数の作品を直に見ている。なのに、いまだ自分なりの解釈すら構築できないのだ。だから本展は、遂に現われた助け舟のような存在だった。展覧会図録に載っている担当学芸員のテキストを頼りに、やっと自分なりの中原浩大像をつくれると期待したからだ。しかし、筆者の身勝手な期待は脆くも崩れ去った。図録(見本)には、過去の中原の発言やテキスト、担当学芸員による本展開催までの経過説明はあったが、肝心の中原浩大論は記されていなかった。プロの学芸員にとっても、中原は扱い難い存在なのだろうか。しかし、本展と図録を通して、彼の仕事のかなりの部分に「子ども時代にできなかったこと」が関与していることが分かった。今後はそこを切り口に中原の仕事を見ることにしよう。なお、本展では再制作品も含め、中原浩大のこれまでの仕事を網羅的に見ることができる。現代美術ファン必見の機会と言っておこう。
2013/10/17(木)(小吹隆文)