artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
プレビュー:フルーツ・オブ・パッション ポンピドゥー・センター・コレクション
会期:2014/01/18~2014/03/23
兵庫県立美術館[兵庫県]
フランス・パリのポンピドゥー・センターにあるパリ国立近代美術館は、現代美術に関する世界屈指の拠点として知られている。本展では、同館の支援団体である「国立近代美術館友の会」が2002年に立ち上げた「現代美術プロジェクト」により収蔵された19作家25点に、現代美術の巨匠の作品6点を加えた31点を紹介する。出品作家は、レアンドロ・エルリッヒ、エルネスト・ネト、アンリ・サラ、ツェ・スーメイ、ダニエル・ビュレン、ゲルハルト・リヒター、サイ・トゥオンブリーなど。これだけの面々が一堂に揃う機会は珍しく、現代美術ファン垂涎の機会となるだろう。なお、本展は巡回の予定がなく、兵庫県立美術館1館のみの開催となる。
2013/12/20(金)(小吹隆文)
プレビュー:GRAPHIC WEST 6 大阪新美術館建設準備室デザインコレクション 熱情と冷静のアヴァンギャルド
会期:2014/01/17~2014/03/05
dddギャラリー[大阪府]
大阪新美術館建設準備室のデザイン・コレクションは、2010年にサントリーミュージアム[天保山]からポスター・コレクションの寄贈を受けたこともあり、質量ともに日本トップクラスの評価を受けている。本展では、それらのコレクションのなかから、グラフィック・デザインの発展期である1920~30年代と、成熟期である1950~60年代の作品約50点を展覧する。第2次大戦前のロシア・アヴァンギャルド、バウハウス、デ・ステイルや、戦後一世を風靡したスイス・スタイルなどの作品を通して、文化で社会を変えようとした先人たちの軌跡を振り返りたい。
2013/12/20(金)(小吹隆文)
Li-Ren Chang(張立人)展「古典小電影」
会期:2013/12/16~2013/12/27
YOD Gallery[大阪府]
台湾の映像作家が日本初個展を開催。出品作品《古典小電影》シリーズは、名作絵画やポスターの女性たちが服を脱いで裸になるもので、名称は台湾の戒厳令時代に上映されていたポルノ映画に由来する。作品の真意は、戒厳令時代に人民と政府が口裏を合わせたかのように規範的な日常を送り、社会の矛盾に目をつむっていたことへの言及であり、少女が服を脱ぐ過程で作品と観客の内面に発生する矛盾を明らかにすることだ。有名な絵画の主人公たちが表情を変えずに服を脱いでいくことには驚かされたが、欲情するほどのエロさではない。むしろ、不自然な動作とシチュエーションが醸し出す滑稽さこそが、このシリーズのキモではないかと感じた。
2013/12/16(月)(小吹隆文)
高橋耕平 個展 HARADA-san
会期:2013/12/06~2013/12/27
Gallery PARC[京都府]
反復や複製から発生する小さなズレや比較をテーマにした映像作品で知られる高橋耕平が、一風変わった新作を発表した。それは、「はらださん」という京都の美術関係者の間では有名なアート・ウォッチャー(コレクターではない)の日常と個人史を追った、約1時間のドキュメンタリー形式の映像作品である。会場には、1枚の白い板が立ち、片面に映像が投影され、反対側には「はらださん」の個人史が年表として提示される。しかし、彼が語る言葉にせよ、年表にせよ、それが真実だと裏付けるものは一切ない。だとしたら、人間は何を見て、何を知っているというのか。そんな根本的疑問とともに、ドキュメンタリーという形式が鑑賞者の認識をステレオタイプ化させる可能性についても考えさせられる作品だった。
2013/12/13(金)(小吹隆文)
岡崎邦夫のコレクション展
会期:2013/12/04~2013/12/08
iTohen[大阪府]
大阪在住の眼科医で美術コレクターの岡崎邦夫氏が、自身のコレクションを披露する展覧会を行なった。この種の展覧会は自己顕示欲の発露と誤解されかねないが、本展は真逆。岡崎氏が丹念に画廊を訪ね、画廊主や美術家との交流を深めながら収集した軌跡がうかがえ、非常に好感が持てる内容だった。作品は若手のものが中心で、購入時には無名だったが今や人気作家となった者も多い(O JUN、鴻池朋子、津田直、三宅砂織、小沢さかえ、風能奈々、東義孝など)。また、ミュージアムピースはないが、それがかえって作品との親密な距離を表わしているかのようだった。他のコレクターも同様の機会を持てばよいと思う。コレクションの棚卸ができるし、なにより他者に共感される喜びは他に代え難いからだ。
2013/12/05(木)(小吹隆文)