artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

プレビュー:超京都2013「現代美術@平成の京町家」

会期:2013/10/04~2013/10/06

平成の京町家モデル住宅展示場KYOMO[京都府]

京都の伝統文化を色濃くたたえた場所で現代美術展を行なうことにより、双方の新たな可能性を模索してきた「超京都」。2010年の杉本家住宅(江戸時代以来の商家・町家)、2011年の名勝渉成園(東本願寺の飛地境内地・庭園)に続く3回目の今回は、平成の京町家を提案するモデル住宅展示場「KYOMO」を会場に選んだ。京町家の伝統的な外観と空間性を継承しつつ現代の技術・性能・デザイン・エコロジーを加味した平成の京町家は、「超京都」のコンセプトと見事に合致する。参加画廊は、hpgrp GALLERY TOKYO、イムラアートギャラリー、MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w、ミヅマアートギャラリー、MORI YUGALLERY、小山登美夫ギャラリー、ヨシアキイノウエギャラリーの7つ。また、京都市立芸術大学が特別展示で参加していることにも注目したい。

写真=会場イメージ

2013/09/20(金)(小吹隆文)

プレビュー:旧羽室家住宅アート・プロジェクト 森口ゆたか「子どもの情景─時を超えて─」

会期:2013/10/12~2013/10/20

原田しろあと館(旧羽室家住宅・原田城跡)[大阪府]

中世の貴重な城郭跡であり、昭和初期の建築遺産でもある、原田しろあと館(旧羽室家住宅・原田城跡)。応仁の乱を記す古い文献や織田信長の出城として戦国史に名を残す場所であり、明治末以来の郊外住宅地のシンボルでもある同館を舞台に、美術家の森口ゆたかがサイトスペシフィックな展覧会を行なう。近年の森口といえば、映像インスタレーション作品による個展や、NPO法人を設立して医療現場へのアートの導入を図るホスピタル・アートの活動で知られている。その根底にあるのは人と生命を慈しむ心であり、本展でも子どもたちの古写真や長年の記憶をとどめた調度類などを素材に、追憶のかなたから淡い心象風景が立ち上るような展示を行なう予定だ。過去と現在が幾重にも往還し、美しいエコーに満ち溢れた空間が出現することを期待する。

2013/09/20(金)(小吹隆文)

村上愛 展

会期:2013/09/17~2013/09/22

GALLERY はねうさぎ[京都府]

ぐにょぐにょとした有機的な形態が結合・連鎖し、ひとつの物体を形づくっている。村上愛の陶オブジェだ。彼女は事前にプランを練ることなく、土をひねるうちに見えてきた形をひたすら追い求めている。ディテールを観察すると、そこには植物、鳥、菌類、四足の獣、正体不明の生物らしきものが見える。多様な生命が息づく個にして全の世界。それはまるで森や珊瑚礁のようではないか。そしてもうひとつ忘れてはならないのが、連続する曲線と不安定な形態を支える構造の確かさと焼成技術、そして全体を破綻なく(いや、破たんの連続と言うべきか)まとめ上げる構成力の高さだ。本展では3点が出品されたが、もっと多くの作品で床と壁面が埋め尽くされる様子を見てみたい。それこそ森の中や珊瑚礁の海に包まれるような感覚が得られるのではなかろうか。

2013/09/17(火)(小吹隆文)

「T」大崎のぶゆき

会期:2013/09/17~2013/09/28

galerie 16[京都府]

水溶性の紙にペイントし、水の中に浸してイメージが溶解・崩落する様を撮影した映像作品や、壁紙の模様が溶け落ちる映像作品で知られる大崎のぶゆき。昨年に大阪で開催した個展では自分自身を題材にして「記憶」という要素を加味したが、本展ではその発展形とも言うべき新作が展示された。それは、友人Tに子ども時代の記憶を取材し、大崎自身がTの記憶をトレースするというものだ。具体的には、取材で聞き出した場所に実際に出かける、インターネットで情報を収集するなどの行為を行なったが、その過程で浮き彫りになったのは、Tの記憶が極めて曖昧なことだった。つまり人間の記憶はリアルとフィクションがミックスされているのである。作品は、Tから提供された記憶にまつわる写真、関連する物体、大崎の映像とスチール写真で構成されていた。リアルとも、フィクションとも、その両方とも言い難い作品世界を見ていると、はなはだ不安定な浮遊感に襲われる。しかし、その感覚は不快ではなく、むしろ甘美さを伴っているのだ。この両義的な感覚こそが本展の核心であろう。

2013/09/17(火)(小吹隆文)

六甲ミーツ・アート 芸術散歩2013

会期:2013/09/14~2013/11/24

六甲ガーデンテラス、自然体感展望台六甲枝垂れ、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、六甲オルゴールミュージアム、六甲山ホテル、六甲ケーブル、六甲ヒルトップギャラリー、オテル・ド・摩耶(サテライト会場)[兵庫県]

今年で4度目の開催となる「六甲ミーツ・アート(以下、RMA)」。そのテーマは、ピクニック感覚で山上に点在する現代美術を鑑賞することにより、六甲山の豊かな自然環境を再認識することだ。回を追うごとに評判が高まり、いまや秋の関西を代表する美術イベントになりつつある。今年は39組の作家が出品し各会場で見応えのある展示を行なったが、なかでも六甲高山植物園と六甲オルゴールミュージアムは質・量ともに充実していた。この2会場は昨年も見応えがあり、もはやRMAの顔といっても差支えないだろう。また、今年からパフォーマンスを中心とした「公演部門」が新設されており(5組が出演)、その成否が注目される。いま数多くあるアート・イベントのなかで、珍しく民間企業(阪神電鉄)が主催するRMA。それでいて無闇に企業色を押し出してこないところも好感が持てる。今後紅葉の時期になれば、一層魅力的なアート&自然体験ができるだろう。

2013/09/13(金)(小吹隆文)

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