artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

村岡三郎へのオマージュ

会期:2014/01/12~2014/01/31

galerie 16[京都府]

昨年7月に逝去した美術家・村岡三郎を偲び、17作家がオマージュを捧げた。作家名を挙げると、今井祝雄、植松奎二、遠藤利克、柏原えつとむ、河口龍夫、小清水漸、庄司達、建畠晢、戸谷成雄、福岡道雄などそうそうたる面々で、村岡の交友関係と影響力の大きさが改めて感じられる。作品は新作と旧作が混在していたが、一観客としては1970年代の作品を出品した植松奎二のように、美術史の流れのなかで自身と村岡の関係を意識させる作品に見応えを感じた。また村岡の作品も出品されたが、代表作ではなく、自身が普段は用いないジャンルの作品を出品する企画展のために描いた絵画作品が選ばれていた。これは村岡流の諧謔精神を意識した演出だろうか。いずれにせよ趣味のよいセレクトだった。

2014/01/14(火)(小吹隆文)

アカサカヒロコ新作色鉛筆画+展

会期:2014/01/11~2014/01/26

SELF-SOアートギャラリー[京都府]

2フロアを持つギャラリーの1階では、主に子どもを描いた色鉛筆画を展覧。2階では銅版画と豆本、ブックオブジェが展示され、彼女の幅広い創作活動を知ることができた。どの作品も興味深かったが、特に充実していたのは色鉛筆画だ。子どもたちの日常の一コマを切り取ったかのようなそれらは、的確な描写と省略、ワンポイントの色遣いが効果を上げており、見る者を一瞬にして虜にしてしまう。また、ダンスのような一連の動作を描いた連作も魅力的だった。彼女は器用な性質のようで、作品や仕事の傾向により複数の作風を使い分けている。それは構わないが、色鉛筆画に格別の魅力を感じている筆者としては、今後も色鉛筆画をお忘れなく、と一言申し添えておきたい。

2014/01/14(火)(小吹隆文)

ターナー展

会期:2014/01/11~2014/04/06

神戸市立博物館[兵庫県]

英国を代表する風景画の巨匠ターナー。その名は知っていたが、日本国内で彼の作品を見る機会は乏しく、それだけに本展には大きな期待を抱いていた。いざ会場に出かけると、壮大な情景を描いた油彩画の大作が数多くあり、これまで小品や水彩画しか見たことがなかった筆者は驚くばかり。晩年の作品のなかには時代を100年近く先取りした抽象画や、当時の画家とは明らかに画風が異なる作品もある。抽象画の多くは未完成品らしいが、仔細に眺めると意図的に描いたと思しきものもあり、ターナーと20世紀美術の関係に好奇心が刺激された。こういうとき、美術史を体系的に学んでいない自分を残念に思う。いつか自習の時間を持ちたいと思う。

2014/01/10(金)(小吹隆文)

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野井成正 作品集出版記念作品展「あそびごころ」

会期:2014/01/08~2014/01/19

iTohen[大阪府]

大阪を拠点に、長年にわたり空間デザインの仕事を行なってきた野井成正。彼の作品集出版を記念した本展では、大量のドローイングを中心に彼の仕事の一端を垣間見ることができた。展覧会を見るまでは、設計のエッセンスを示したラフや抽象的なもの、あるいは図面が多いのではないかと予想していたが、実際には俯瞰のアングルでディテールまで具体的に描かれたスケッチが多く、素人でも完成形を容易に想像できる丁寧な仕事ばかりだった。それだけにどの作品も情報量が多く、観覧には思いのほか時間がかかったが、会場の小ささがよい方向に作用したのだろう。凝縮感のある個展に仕上がっていた。

2014/01/09(木)(小吹隆文)

大阪府20世紀美術コレクション 上前智祐 展─時を刻む─点描・マッチ・縫い・版画

会期:2014/01/09~2014/01/25

大阪府立江之子島文化芸術創造センター[大阪府]

大阪府が所蔵する上前智祐の作品から、各年代の油彩画と立体36点、版画23点を展覧。また、彼が所属していた具体美術協会の、吉原治良、嶋本昭三、元永定正、松谷武判、今井祝雄の作品も同時に展示された。上前の作品は、初期の点描画、その後のオガクズやマッチ棒を塗り固めた作品、後期の針と糸による縫いの作品など、時期により素材と手法が異なる。しかし、緻密な作業の積み重ね、膨大な時間の集積という点では一貫しており、さらに後期になればなるほどアール・ブリュット的無為の境地に達する。本展は、決して大規模ではないが、上前の世界を過不足なく知ることができる見応えある展覧会だった。大阪府はほかにも優れた美術作品を所蔵しているが、自前の美術館を持たないので十分な展覧会が行なわれていない。展覧会活動の活発化を望む。

2014/01/09(木)(小吹隆文)