artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

プレビュー:ウィリアム・ケントリッジ《時間の抵抗》

会期:2014/02/08~2014/03/16

元・立誠小学校 講堂[京都府]

来年に京都市内で開催される「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015」。本展はそのプレイベントであり、南アフリカの美術家、ウィリアム・ケントリッジの大規模なインスタレーション作品《時間の抵抗》を見ることができる。同作品は2012年の「ドクメンタ」で発表され、5面スクリーンの映像と、多重音響、象徴的な運動機械で構成されている。内容は、人間が時間に対して持つアンビバレントな感情を詩的に綴ったものだ。彼の作品を見るのは2009年に京都国立近代美術館で行なわれた個展以来だが、当時の感動を再び味わえることが嬉しい。

2014/01/20(月)(小吹隆文)

プレビュー:アンドレアス・グルスキー展

会期:2014/02/01~2014/05/11

国立国際美術館[大阪府]

アンドレアス・グルスキーといえば、ドイツ現代写真を代表する存在であり、トーマス・ルフやトーマス・シュトゥルートらと共にベッヒャー派の一翼を担う作家である。筆者は過去に何度か彼の作品を見た経験があるが、人間の視覚を超えたビジュアル体験(巨大な画面に広大かつ奥行きのある空間が写っているにもかかわらず、細部までびっしりとピントが合っている)に驚きと戸惑いを覚えた。本展では、そんなグルスキーの世界が初期作から最新作まで思う存分味わえるとのこと。非常に楽しみだが、生涯初の“写真酔い”を経験するのではないかと、一抹の懸念も抱いている。

2014/01/20(月)(小吹隆文)

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デヴィット・シャリオール写真展“ISOLATED BUILDING STUDIES”

会期:2014/01/11~2014/02/23

GALLERY TANTO TEMPO[兵庫県]

デヴィット・シャリオールは米国・シカゴを拠点に活動する写真家で、区画整理など何らかのの理由で街区に1軒だけ取り残された建物を、真正面から撮り続けている。そのテーマは社会学的であり、一定の構図を守り続けている点でタイポロジーの系譜に属する作家と言える。空き地の中に孤立した建物の姿は寂しげだが、時には崇高さをたたえ、またある時にはマグリットの絵画にも似たシュールな姿を見せてくれる。また、西洋建築におけるファサード(正面デザイン)の重要性にも気付かされた。今回は10数点の作品と絵はがきサイズの小品35点からなる小規模な展示だったが、チャンスがあれば、広い空間で今回の何倍もの作品が並ぶ様を見てみたい。

2014/01/18(土)(小吹隆文)

フルーツ・オブ・パッション ポンピドゥー・センター・コレクション

会期:2014/01/18~2014/03/23

兵庫県立美術館[兵庫県]

フランス・パリのポンピドゥー・センターにあるパリ国立近代美術館には、支援組織「国立近代美術館友の会」がある。この会は2002年に「現代美術プロジェクト」を立ち上げ、同館への作品の寄贈を続けてきた。2012年に同会の活動10周年を記念して開催された展覧会を日本に持ってきたのが、この「フルーツ・オブ・パッション~」だ。展示作品は、寄贈作品25点と、20世紀美術のマスターピース6点。前者には、レアンドロ・エルリッヒ、ハンス=ペーター・フェルドマン、エルネスト・ネト、アンリ・サラ、ツェ・スーメイといった今が旬の作家たちが数多く含まれ、後者には、ダニエル・ビュレン、ゲルハルト・リヒター、サイ・トゥオンブリーといった巨匠が名を連ねている。これだけの面々が名を連ねる現代美術展は貴重であり、実際に驚くほど豊かな作品体験ができた。幸か不幸か本展は巡回せず、神戸でしか見ることができない。情報が伝われば、きっと全国から熱心な現代美術ファンが訪れるであろう。

2014/01/18(土)(小吹隆文)

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大阪新美術館建設準備室デザインコレクション 熱情と冷静のアヴァンギャルド

会期:2014/01/17~2014/03/05

dddギャラリー[大阪府]

大阪新美術館建設準備室が所蔵するグラフィック・デザインのうち、ロシア・アヴァンギャルド、デ・ステイル、バウハウス、戦後オランダとスイスのデザインなど、1920~30年代と1950~60年代の優品約50点が展示された。同館のデザイン・コレクションは、2012年にサントリー・ポスター・コレクション約2万点の寄託を受けており、質・量ともに国内屈指の規模を誇る。その貴重な財産を積極的に活用するのは結構なことだ。実際、アレクサンドル・ロトチェンコ、エル・リシツキー、テオ・ファン・ドゥースブルフ、ヘルベルト・バイヤー、マックス・ビルといった巨匠の作品が並ぶ展示は素晴らしかった。その一方で、計画立案から30年を経て、未だに開館の目途が立たない美術館の現状には嘆息せざるをえない。初日のトークによれば、今年度中に基本計画案を提出し、議会の信任を得て、早ければ2020年頃に開館とのこと。しかし、同様の話を過去に何度聞いたことだろう。今度駄目だったら、いっそ永遠に準備室のまま漂流する方が革新的かもしれない(もちろん冗談だが)。

2014/01/17(金)(小吹隆文)

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