artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
奇想の女子陶芸 超奇想!超デコ!超手しごと!~関西発21人展~
会期:2013/10/15~2013/10/22
阪急うめだ本店 9階アートステージ[大阪府]
超細密な手仕事の集積、本体を超えんばかりの装飾、異様な外見、独自の制作法といった特徴を持つ女性陶芸家たちが集結した。作家の半数以上は1980年代生まれだが、その頃にデビューしたベテランも2名含まれる。百貨店での展示だけに販売面への配慮もあり、純粋なオブジェは少数。基本は器の展覧会であった。それでも彼女たちの仕事の特異さを見るには十分で、現代の陶芸界で起こっている地殻変動を垣間見られた。彼女たちの仕事はどこまで行っても陶芸のメインストリームにならないかもしれない。しかし、そのしがらみのなさ、自由さは特筆すべきものであり、いまを全力で生きる風情が少なからず支持を集めている理由であろう。出品作家を50音順に記す。植葉香澄、内田恭子、馬岡智子、梅本依里、大江志織、大槻智子、篠崎裕美子、新宮さやか、高間智子、田中知美、谷内薫、堤展子、津守愛香、楢木野淑子、花塚愛、原菜央、服部真紀子、藤信知子、村田彩、山極千真沙(直前に1名の出展がなくなったため、実際には20名の展示となった)。
2013/10/15(火)(小吹隆文)
旧羽室家アート・プロジェクト 美術家 森口ゆたかが見つめた 子どもの情景
会期:2013/10/12~2013/10/20
原田しろあと館[大阪府]
大阪市に隣接する郊外住宅地として知られる豊中市の曽根エリア。本展の会場となった原田しろあと館は、元々は昭和12年築の旧羽室家住宅(国登録有形文化財)であり、敷地は織田信長や古田織部とも縁のある中世の城跡だ。同所での展示を依頼された森口は、あえて自分を引き気味にして、主に邸宅に遺されていた写真や什器などを駆使したインスタレーションを構築。この屋敷で過ごした家族の記憶や子どもへの愛情に満ち溢れた空間をつくり上げた。なかでも、和室で展示された戦前と現代の子どもたちの写真パネルの共演と、80年前からある写真現像用の暗室で行なわれた家族写真のスライドショーは見応えがあった。ささやかだが、それゆえ愛おしい。本展を一言で表わすとこんな感じだろうか。
2013/10/15(火)(小吹隆文)
フクシマサトミ 襖絵展
会期:2013/10/05~2013/10/13
陶々舎[京都府]
大徳寺にほど近い瀟洒な木造邸宅を、ほぼそのまま利用した会場で行なわれた本展。室内を取り囲むように展示された作品は、筆を一切使わず、紙に染料をかけ流した痕跡と滲みだけでつくられていた。それらは5から6の色層で構成されており、ひとつの層が乾くのを待って次に移るという、手間のかかる制作方法が取られている。画風は抽象的だが、床の間だけは山水画を思わせる仕上がり。これは作者が最初から意図したものではなく、偶然風景らしい図像が見えてきたので、途中から山水画に寄せたそうだ。周囲を埋め尽くしているのに圧迫感はなく、逆に広がりのある空間が眼前に広がるかのような、伸びやかさが魅力的な作品だった。
2013/10/11(金)(小吹隆文)
展覧会「サイネンショー」
会期:2013/10/04~2013/10/19
MATSUO MEGUMI VOICE GALLERY pfs/w[京都府]
陶芸家の松井利夫を中心としたグループによる本展では、不要陶磁器を再び窯で焼成したやきものが多数展示されていた。ちなみに燃料も建築廃材を使用しており、本展の根幹に東日本大震災後顕著に語られるようになった現在の社会システムへの疑問があることは間違いない。筆者自身はその論には必ずしも首肯しかねる立場だが、出来上がった作品には興味を覚えた。それらの多くは変形・変色し、なかには溶けた釉薬が接着剤となって複数の器が結合した奇怪なオブジェもある。侘び茶を大成した千利休や、便器を芸術作品に転換したマルセル・デュシャンのように、既成概念を逆転するロジックをひねり出すことができれば、これら再生やきものにも明るい未来が広がるだろう。要はそのロジックがつくれるか否かだ。
2013/10/08(火)(小吹隆文)
超京都2013「現代美術@平成の京町家」
会期:2013/10/05~2013/10/06
平成の京町家モデル住宅展示場 KYOMO[京都府]
京町家の大商家や、東本願寺の飛地境内地といった京都の歴史的建造物を会場に、現代美術の作品展示を行なってきた「超京都」。3回目の今回は、過去2回から一転して現代の住宅展示場を会場に選定。と言ってもありきたりなショールームではない。「平成の京町家」を提案する極めて珍しい住宅展示場なのだ。伝統的な意匠や設計思想を継承しつつ、室内は現代のライフスタイルにも合致した平成の京町家は、現代美術との相性も抜群。美しい生活空間と作品がマッチして、ほかでは味わえないユニークな美術体験ができた。しかし、住宅5棟に7画廊と1美術大学が集ったこのイベントで、入場料2,000円が妥当かと言われるとやや疑問。主催者の苦労を知るだけに言いにくいが、この点だけは改善の余地ありだ。
2013/10/04(金)(小吹隆文)