artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
中西學 展 Brightness─multiple galaxy
会期:2013/01/28~2013/02/02
番画廊[大阪府]
中西が近年精力的に取り組んでいる《Luminous Flux》シリーズの新作10点を出品。同シリーズは、和紙にアクリル絵具でマーブリングを施し、表面を透明ポリエステル樹脂でコーティングした抽象的な平面作品だ。光学的な明るさ、精神の高揚、天体の運行などを意識した表現であり、人間が追求してやまない普遍的・根源的なビジョンを彼なりの美意識で具現化したものと言える。技術の向上とともに作品サイズも大型化し、本展ではF150号の大作を出品するに至った。これが滅法よい出来栄えで、同シリーズもいよいよ円熟期を迎えたのではなかろうか。中西は今年で創作活動30周年を迎えるが、まずは上々のスタートと言っていいだろう。
2013/01/28(月)(小吹隆文)
周縁からのフィールドワーク
会期:2013/01/18~2013/02/02
ギャルリ・オーブ[京都府]
写真家の小野規が2000年代にパリ近郊の郊外団地を撮影したシリーズ《周縁からのフィールドワーク》を起点に、周縁・境界を意識して自身の表現を模索する4作家(藤本由紀夫、小沢さかえ、中川トラヲ、山本基)を加えた展覧会。日本の公団住宅で育った筆者にとって、小野が捉えたフランスの郊外団地の情景はどこか懐かしく、20世紀モダニズムの普遍性を改めて実感した。一方、パリの郊外団地と言えば、1995年のフランス映画『憎しみ』に代表される、移民の巣窟で犯罪多発地帯という印象もある。小野の作品には映画のような荒廃した空気が感じられなかったが、実際はどうなのだろう。また、本展で筆者がもうひとり注目したのは、藤本由紀夫だった。作品は彼の定番と言うべき、オルゴールを用いたサウンドオブジェだったが、胴体部分を梱包用の段ボールで制作していたのだ。ガラスや金属を用いたこれまでの作例とはずいぶん違う印象で、見慣れた作品から新たな魅力を引き出したのは見事だった。
2013/01/24(木)(小吹隆文)
高田光治 展
会期:2013/01/15~2013/01/31
ギャラリー風[大阪府]
以前見た高田の作品は平面で、作品の表面をレースの布で覆ったものだった。ところが今回の作品はまったく別物。野山で採集したキノコ、粘菌、種子、植物、昆虫などが標本よろしくスポンジ製の台座に設置され、全長2~3メートルの船型立体の上にずらりと並べられていたのだ。まるでノアの方舟である。また、平面、立体、ケース型の作品なども展示されていた。聞くところによると、作家は勤務地の美大近辺の山々で、長年にわたり採集を続けてきたという。なるほど、過去の作品にもこうした生命への関心がベースにあったのか。それにしても、この方舟の魅力的なことと言ったら。事前に内容を知らずに出かけたので、感動もひとしおだった。
2013/01/22(火)(小吹隆文)
プレビュー:PAT in Kyoto 京都版画トリエンナーレ2013
会期:2013/02/23~2013/03/24
京都市美術館[京都府]
デジタル技術の発展等により、技法やジャンルの可能性がますます広がりつつある版画。その一方、技術が進むほどに「刷る」というプリミティブな手法が見直される側面もあるだろう。そんな版画を巡る状況に呼応したのか、新たな版画トリエンナーレが京都で始まることになった。形式は一般公募ではなく、複数のコミッショナーによる推薦制を採用。展示方法も、シリーズ作品やインスタレーション的大作の出品を可能にするなど、柔軟な姿勢が貫かれている。選出された若手・中堅の21作家が、どのようなかたちで版画表現の豊かさを見せてくれるのかに期待したい。
2013/01/20(日)(小吹隆文)
プレビュー:展覧会ドラフト2013 Project'Mirrors'
会期:2013/02/05~2013/02/26
京都芸術センター[京都府]
「展覧会ドラフト」とは、2名の審査員により展覧会企画を選出する公募展のこと。今回は、尾崎信一郎(鳥取県立博物館副館長)と住友文彦(フリーランス・キュレーター)が審査員を務め、稲垣智子(美術家)+高嶋慈(批評家)+多田智美(編集者)による「Project'Mirrors'」を選出した。その詳細は、稲垣智子の作品展を稲垣自身と高嶋がキュレーションして2つの展覧会を行ない、多田がカタログ制作者として展覧会全体にかかわるというもの。異なる立場の3人がひとつの場をつくり上げることで、どのような展覧会が形つくられるのかが興味深い。
2013/01/20(日)(小吹隆文)