artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
木野智史 展
会期:2013/01/14~2013/01/26
ギャラリー白3[大阪府]
ロクロ成形と磁土にこだわった、シャープなフォルムの陶芸作品を発表する木野智史。それらは実用品ではないが、かといってオブジェ(=ファインアート)の一言で片づけられるものでもない。陶芸の技法、精神、歴史を尊重し、陶芸でしかありえない、それでいて従来の何ものとも違う造形。それが彼の目標ではなかろうか。本展では、ロクロ成形した円環の1カ所に切れ目を入れ、その部分を起点に大胆な反りを入れた作品を発表。紙にサッと描いた一本線のような、緊張感のある形態をつくり出すことに成功した。その形態に、磁土特有の白い地肌と澄み渡る青磁釉がマッチしていたのは言うまでもない。
2013/01/14(月)(小吹隆文)
溶ける魚 つづきの現実
Gallery PARC、京都精華大学ギャラリーフロール[京都府]
会期:2013/01/10~01/20(Gallery PARC)、2013/01/10~01/26(京都精華大学ギャラリーフロール)
荒木由香里、衣川泰典、木村了子+安喜万佐子、高木智広、花岡伸宏、林勇気ら若手・中堅作家10名+1組による自主企画展。アンドレ・ブルトンの著作から引用した展覧会名は、シュルレアリスムが生まれた第一次世界大戦後と、東日本大震災後の日本の社会状況に共通性が感じられるという、出品作家たちの認識による。作品を見ると、シュルレアリスムから技法上の影響を受けていたり、モチーフに関連性が見受けられる者もいた。しかし、彼らはシュルレアリスムの再興を狙っているのではない。本展の主題は、シュルレアリストたちが無意識や夢などの領域を探究して新たな美を開拓したように、いまを生きる作家も今日の美を追求しよう、そのために自身の制作を再確認しようという、意志の提示なのだ。筆者が見る限り、彼らの目的は十分達せられたように思われる。
2013/01/12(土)(小吹隆文)
フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活
会期:2013/01/10~2013/03/10
兵庫県立美術館[兵庫県]
アルヴァ・アアルト、カイ・フランク、マリメッコなど北欧デザインの優品が集結し、トーヴェ・ヤンソンの『ムーミン』の原画が見られることで、人気を博するであろう本展。しかし、展覧会導入部で示される叙事詩『カレワラ』の重要性を知ることこそが、本展の核心ではなかろうか。19世紀末から20世紀初頭のフィンランド絵画に描かれた北国の風景、アルヴァ・アアルトの椅子で活用される合板技術、マリメッコのテキスタイルに描かれた花々、それらの根底には、必ずと言ってよいほど『カレワラ』に記された世界観が横たわっている。北欧デザイン=おしゃれ、ムーミン=かわいいで終わるのではなく、ひとりでも多くの人が『カレワラ』の重要性に気づくことを望む。
2013/01/09(水)(小吹隆文)
フジイフランソワ展
会期:2013/01/07~2013/01/19
Oギャラリーeyes[大阪府]
大阪では約2年ぶりとなるフジイフランソワの個展。今回は、付喪神を描いた百鬼夜行図風の作品や、和菓子と動物を掛け合わせた小品のほか、《月のコブコブラ》《高座龍神》と題された大作2点も出品された。特に《高座龍神》は、この作家にしては珍しく人物(正確には神像)を描いており、貴重な作例だ。今後は人物を描く機会が増えるのだろうか。次の個展がいまから楽しみだ。
2013/01/07(月)(小吹隆文)
プレビュー:MIO PHOTO OSAKA 2013
会期:2013/01/30~2013/02/03
天王寺ミオ 12階ミオホール、11階ライトガーデン[大阪府]
1998年から始まった写真の公募展。昨年から形式が大幅に変更され、次年度の個展開催をかけた公開ポートフォリオレビューと、前年に選ばれた作家たちによる個展の2本立てイベントとなった。審査員は昨年同様、島敦彦(国立国際美術館学芸課長)、今森光彦(写真家)、森村泰昌(美術家)の3名。また、前年のポートフォリオレビューで選ばれた井上尚美、角木正樹、山下望の3名が個展を開催する。さらに、森村泰昌の制作現場を撮影した写真家・福永一夫の作品展と、森村×菅谷富夫(大阪市立近代美術館建設準備室)の対談もセットされており、内容の濃い5日間となる。
2012/12/20(木)(小吹隆文)