artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

門田訓和 before that

会期:2012/12/08~2012/12/24

ARTZONE[京都府]

32色の折り紙を、決まった折り方、並べ方で多重露光した写真作品《coloe paper》を中心に、同様の手法で制作したモノクロの作品や映像作品を出品。透過性のある色面が幾重にも折り重なった画面は純粋に美しく、同時に行為と時間の積層が目に見える形で刻印されている。この軽やかさ、透明感を他の方法で表現するのは難しいだろう。昨年春に大学院を修了したばかりの若手とは思えない、完成度の高い個展だった。

2012/12/08(土)(小吹隆文)

注目作家紹介プログラム チャンネル3 河合晋平博物館

会期:2012/11/27~2012/12/24

兵庫県立美術館[兵庫県]

樹脂やプラスチック製品などを駆使して、微生物のような“存在物”(=オブジェ)や、バーチャルな生態系をつくっている河合晋平。彼にとって過去最大規模となる本展では、25種類・53点の作品が一堂に会し、彼が長年かけて構築した世界を概観することができた。会場は天井が非常に高く、小サイズの作品が多い河合がこの場所をどう料理するのか注目していたが、彼は六角ワイヤーネットやプラスチックのチューブを駆使して縦方向の広がりを強調したり、吊り下げ型の作品を投入することで問題を解決した。彼のキャリアのなかでも重要な位置を占める個展と言えるだろう。

2012/12/07(金)(小吹隆文)

大崎のぶゆき展 リバーシブルストーリーズ

会期:2012/12/03~2012/12/22

ギャラリーほそかわ[大阪府]

時間とともにイメージが変容する映像を中心としたインスタレーションで知られる大崎が、新作を発表。作品はどこかの山中と湖畔を訪れた際の記憶をもとにしており、映像のほか、愛用のベスパ(スクーター)、赤い上着、船のオールなどで構成されていた。近年の大崎作品よりもプライベートに踏み込んだ印象が強いが、彼の旧作を知る人ならどこか懐かしさを覚えるかもしれない。現在のスタイルに過去作品の要素を盛り込んだ新作は、彼の今後の方向性を示唆しているのだろうか。次の個展が今から楽しみだ。

2012/12/06(木)(小吹隆文)

山野千里 展:ジャングル短編

会期:2012/12/01~2012/12/22

ARTCOURT Gallery[大阪府]

陶芸作家の山野は、動物と人間が等価の立場で戯れている情景や、動物の姿をイマジネーション豊かに変容させた作品で知られている。また、絵画でも同様の主題で作品を発表している。本展では、絵画3点を含む21点の新作を発表。「ジャングル短編」という不思議なタイトルには、既存の価値観が通じない世界で起こるさまざまな物語を意味しているが、絶妙に作品の世界観と一致したネーミングだと思う。技術的にはテラコッタや透かし彫りに挑戦しているのが新しく、歌川国芳やアルチンボルドの寄せ絵を思わせる、頓智の効いた作品があったのも新境地を感じさせた。

2012/12/01(土)(小吹隆文)

片山みやび作品展 ひかりを抱く Glass and Paint Works

会期:2012/11/27~2012/12/09

ワイアートギャラリー[大阪府]

これまで絵画や版画を発表してきた片山が、ガラス作品をメインにした個展に初挑戦した。それらは、カラフルな棒ガラスや板ガラスを組み合わせたもの。これまでの作風をそのまま移行したかたちだが、これが滅法よい。まるで彼女の頭のなかにあったイメージを、そのまま引っ張り出してきたかのようだ。また、イメージが支持体を兼ねているので、イメージが独立して出現したかのように見えるのも、絵画や版画にはない魅力である。独学のためまだ技術的に追いついていない部分があり、歩留まりが悪いらしいが、彼女が新たな鉱脈を発見したのは間違いない。

2012/12/01(土)(小吹隆文)