artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

PAT in Kyoto 京都版画トリエンナーレ2013

会期:2013/02/23~2013/03/24

京都市美術館[京都府]

版画の最新動向と注目作家を発信する新たなトリエンナーレが、京都に誕生した。この「PAT in Kyoto~」では、一般公募ではなく、美術関係者からなるコミッショナーの推薦制を導入。また、作家数を抑えて1人あたりのスペースを広く取ることで、質の高い展示を行なえるよう注力した。21人の出品作家は大半が30~40代で、紙にインクで刷るオーソドックスな表現はもちろん、写真とデジタル技術を駆使した作品や、インスタレーションなど、実に多様だった。版画や既存の芸術ジャンル全般に言及する攻めの姿勢で作家をセレクトしたことは、高く評価されるべきだろう。一方、イベントの周知を図る情報発信や、批評活動の活性化については課題が残った。3年後の第2回では、ぜひそれらを克服してほしい。

2013/02/22(金)(小吹隆文)

プレビュー:特別展覧会 狩野山楽・山雪

会期:2013/03/30~2013/05/12

京都国立博物館[京都府]

天下の覇権が豊臣氏から徳川氏に移った桃山から江戸時代の過渡期、御用絵師集団の狩野派は江戸と京都に分裂した。狩野山楽と山雪は、この激動期に京狩野を率いた初代と二代目である。狩野永徳譲りの気宇壮大さが持ち味の山楽、シュールなまでの個性的な画風を確立した山雪。両者の作品が一堂に会するのは史上初だ(ちなみに、山楽の回顧展は42年ぶり、山雪は27年ぶり)。作品数は、重要文化財13件、新発見9件、初公開6件を含む80件余り。なかでも、ミネアポリス美術館の《群仙図襖》(初里帰り)とメトロポリタン美術館の《老梅図襖》という、元々は表裏をなしていた山雪作品が50年ぶりに再会するのは必見である。

2013/02/20(水)(小吹隆文)

プレビュー:超・大河原邦男 展─レジェンド・オブ・メカデザイン─

会期:2013/03/23~2013/05/19

兵庫県立美術館[兵庫県]

「科学忍者隊ガッチャマン」(1972年)、「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」(1977)、「機動戦士ガンダム」(1979)などのアニメ作品でロボットや兵器のデザインを担当し、メカニカルデザインという仕事を確立した大河原邦男。アニメ界の生ける伝説とも言うべき彼の業績を、直筆の設定資料や宣伝ポスターなど400点以上で振り返る。その多くがこれまで門外不出とされてきたものであり、ファンにとっては垂涎の品ばかりだ。大河原本人が登場する対談やサイン会も予定されており、会場はアニメファンの聖地と化すであろう。

2013/02/20(水)(小吹隆文)

プレビュー:瀬戸内国際芸術祭2013

瀬戸内海の12の島+高松、宇野[香川県、岡山県]

会期:春・2013/03/20~2013/04/21、夏・2013/07/20~2013/09/01、秋・2013/10/05~2013/11/04

2010年に第1回が行われ、約93万人もの動員を記録するなど、大きな話題を集めた「瀬戸内国際芸術祭」。2回目の今年は、香川県西部の5島も会場に加わり、全14会場にスケールアップ。会期を3つに分け、約9カ月ものロングラン開催となる。参加作家・プロジェクトも、22カ国・175組(2月時点)となり、会期、規模、内容の多彩さなど、あらゆる面で空前のアート・イベントに成長した。この巨大な催しは、必然的に観客の行動パターンや芸術観にも影響を与えるであろう。それだけに、この第2回展の成否が日本の美術界に与えるインパクトは決して無視できない。

2013/02/20(水)(小吹隆文)

米田文 展

会期:2013/02/09~2013/02/17

祇をん小西[京都府]

金沢を拠点に活躍している陶芸家の米田文。これまで関西での発表がどれぐらいあったのか知らないが、私は本展で初めて彼女を知った。今回の作品は、時期にちなんで小さな雛飾りがメイン。ほかには、ぐいのみ、小碗、箱があった。雛飾りは2段から5段まで40点近くあり、どれも全長2.5~5センチほどの小品。細部までしっかりとつくり込まれており、思わず手に取って見入ってしまう。釉薬の色彩は九谷焼との共通性が色濃く感じられ、このあたりはさすが金沢の作家である。雛飾りは高価で場所を取り、保管にも気を使うが、彼女の作品なら気楽に愛玩できる。ミニチュア陶器の節句飾りもいいものだ。

2013/02/10(日)(小吹隆文)