artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

村山春菜 展

会期:2012/11/20~2012/12/02

同時代ギャラリー[京都府]

日本画らしからぬ大胆な画風で注目を集めている若手画家が、2年ぶりに個展を開催した。高速道路や高層ビルなどの都市風景を、個性的な線描と鳥瞰の構図で描くのは相変わらず。本展でも2.3×6メートルの大作《お・で・か・け─ちょっと圏外まで─》を筆頭に、10数点が出品された。彼女はスケッチを重視しており、独特の個性的な線は、スケッチを本画のサイズに拡大コピーし、カーボン紙でトレースして描かれている。そんなライブ感を重視する画風が、彼女の個性を一層際立たせているのかもしれない。とにかく、絵に淀みがないのがこの人の魅力だ。今のフレッシュな感覚を保ちながら、さらに画風を発展させてほしい。

2012/11/27(火)(小吹隆文)

鬼海弘雄 写真展 PERSONA

会期:2012/11/10~2012/12/24

伊丹市立美術館[兵庫県]

40年以上にわたり、強烈な存在感を放つ人々を真正面から捉えた《PERSONA》などの作品で知られる写真家・鬼海弘雄。彼の関西初の大規模個展となる本展では、《PERSONA》のほか、《東京迷路》《東京夢譚》《インディア》《アナトリア》から、厳選された約200点が出品された。展覧会の中心をなし、最も存在感を放っていたのは、やはり《PERSONA》の作品群。同一の構図&撮影場所という条件を設定することで、人物の個性が一層際立っていたからだ。よくもこれだけ濃い人を集められたものだ。鬼海の粘り強さとコンセプトへの執着には感心の二文字しかない。10数年の時を経て同じ人物の経年変化が見られたり、何度も写りに来るお馴染みのおばちゃんがいるのも、写真家と被写体の関係性を考えるうえで興味深かった。

2012/11/24(月)(小吹隆文)

プレビュー:フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活

会期:2013/01/10~2013/03/10

兵庫県立美術館[兵庫県]

1950年代以降、国際的に高い評価を受けているフィンランドのデザインを紹介する展覧会。トーヴェ・ヤンソンが創造し、フィンランドの風土やライフスタイルを学ぶよきバイブルと言われる「ムーミン」をガイド役に、19世紀末から20世紀前半の民族主義、『ムーミン』の原画、アルヴァ・アアルトやカイ・フランクの製品デザイン、マリメッコのテキスタイル、現在の公共デザインなど約350点を紹介する。「人間と自然の共存」や「家庭や地域コミュニティの相互扶助」を基本とし、現在のユニバーサル・デザインやエコ・デザインにも大きな影響を与えているフィンランド発のデザインの魅力を知る絶好の機会だ。

2012/11/20(火)(小吹隆文)

プレビュー:山村幸則 神戸における3つの展覧会

会期:2012/12/15~2012/12/25

CAP STUDIO Y3、ギャラリー島田、GALLERY 301[兵庫県]

神戸を拠点に、立体、パフォーマンス、参加型作品、ドローイング、映像など幅広い活動を続けてきた山村幸則。本展では、彼がアトリエを構えるCAP STUDIO Y3の403号室で、「Archives 資料室」と題した一種の回顧展を行なう一方、ギャラリー島田とギャラリー301の2会場で「神戸牛とWalk」と題した新展開を発表。さらには作品集『from hand to hand』を発行するなど、これまで以上に旺盛な活動を展開する。彼にとってマイルストーン的な意味を持つ機会となることは間違いないだろう。

2012/11/20(火)(小吹隆文)

ジョミ・キム アウト・オブ・フォーカス

会期:2012/11/15~2012/12/01

Port Gallery T[大阪府]

壁に立てかけられた靴、カーテン、照明器具、窓越しの風景など、日常の一部を切り取ったピンボケ写真を、インスタレーション的に展示していた。画廊に置かれていた説明文によると、撮影の際、フォーカスを徐々にずらしていくと、ファインダーの向こう側にマジカルな情景が出現するという。それは、本人曰く「日常に最も近い非日常」。このコンセプトと作品配置にすっかり魅了されてしまった。彼女は今年度の「shiseido art egg」に入選しており、来年2月には資生堂ギャラリーで個展が予定されている。このチャンスを生かして、彼女が大きな飛躍を遂げることを期待している。

2012/11/19(月)(小吹隆文)