artscapeレビュー

周縁からのフィールドワーク

2013年03月01日号

会期:2013/01/18~2013/02/02

ギャルリ・オーブ[京都府]

写真家の小野規が2000年代にパリ近郊の郊外団地を撮影したシリーズ《周縁からのフィールドワーク》を起点に、周縁・境界を意識して自身の表現を模索する4作家(藤本由紀夫、小沢さかえ、中川トラヲ、山本基)を加えた展覧会。日本の公団住宅で育った筆者にとって、小野が捉えたフランスの郊外団地の情景はどこか懐かしく、20世紀モダニズムの普遍性を改めて実感した。一方、パリの郊外団地と言えば、1995年のフランス映画『憎しみ』に代表される、移民の巣窟で犯罪多発地帯という印象もある。小野の作品には映画のような荒廃した空気が感じられなかったが、実際はどうなのだろう。また、本展で筆者がもうひとり注目したのは、藤本由紀夫だった。作品は彼の定番と言うべき、オルゴールを用いたサウンドオブジェだったが、胴体部分を梱包用の段ボールで制作していたのだ。ガラスや金属を用いたこれまでの作例とはずいぶん違う印象で、見慣れた作品から新たな魅力を引き出したのは見事だった。

2013/01/24(木)(小吹隆文)

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