artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
宮島達男「Time Train」
会期:2010/11/03~2010/12/29
Six[大阪府]
ドイツのレックリングハウゼンで出品した、鉄道模型にデジタルカウンターを積んで走行する作品《Time Train》を出品。かつて石炭の輸出用に敷かれた鉄道網が、第2次大戦中はユダヤ人を強制収容所に送るために使われたという、歴史的事実に由来する作品だ。本作は日本初公開だが、ミニマルでハードな性格を持つ展示スペースと上手くマッチして、シンプルながら味わい深い展示が行なわれた。また、関西ではなかなか宮島の作品を見られないので、その意味でも貴重な機会だった。
2010/11/02(火)(小吹隆文)
益村千鶴 展 Tenderness
会期:2010/10/26~2010/11/14
neutron kyoto[京都府]
益村といえば、腕、唇、鼻など、人間の身体の一部をモチーフにした、シュールかつ内省的な作風が持ち味だが、新作では一目で本人とわかる人物像を登場させたのが印象深い。今までは人物を特定できないように描いていたのに、一体どんな心境の変化があったのだろう。それにしても相変わらずの冴えまくった描写力。この画力の高さが、作品に確かなリアリティを与えている。
2010/10/26(火)(小吹隆文)
ファッション写真展 女神(ミューズ)たちの肖像 モードと女性美の軌跡
会期:2010/10/21~2011/01/10
神戸ファッション美術館[兵庫県]
同館所蔵の、19世紀後半から1990年代までのファッション写真約130点を、各時代のオートクチュールやプレタポルテ(これも所蔵品)とともに展覧。他の美術館では真似のできない、写真と実物をシンクロさせる手法で、非常に説得力のある展示となった。また、会場入口では、ベルナール・フォコンの写真と、彼の作品に登場するマネキン人形数十体を対面配置して観客を歓待するという、心躍る演出がなされていた。写真は、まさにファッション写真史を代表する名作揃い。しかもそのすべてが発表当時のプリントだというのだから恐れ入る。嬉しさと同時に「これだけのコレクションを持ちながら、なぜ今まで有効活用しなかったのか」と、軽い憤りも感じたりして。今後は本展のような工夫を凝らした企画をどんどんやってほしい。
2010/10/21(木)(小吹隆文)
プレビュー:Exhibition as media 2010『SHINCHIKA SHINKAICHI(シンチカ シンカイチ)』
会期:2010/11/15~2010/12/05
神戸アートビレッジセンター[兵庫県]
勝村富貴、久門剛史、藤木倫史郎、藤野洋右、吉川辰平からなるアートユニット、SHINCHIKAは、2002年に大阪・新世界の「新世界国際地下劇場」からインスピレーションを受け、結成された娯楽チームだ。記憶、都市、個人的な物語の断片をインターネットを駆使して編集し、映像、音楽、インスタレーションなど、幅広いジャンルの作品へと変換させる。本展では、彼らの今までの作品を展示するほか、会場の神戸アートビレッジセンターが立地する新開地エリアのエッセンスを取り入れた新作も発表。センター内各所に彼らの世界が展開される。
2010/10/20(水)(小吹隆文)
プレビュー:ポスター天国 サントリーコレクション展
会期:2010/11/13~2010/12/26
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
今年12月末で、16年間の活動に終止符を打つサントリーミュージアム[天保山]。大都市なのに美術館が貧弱な大阪にあって、独自の企画を提供し続けてくれた功績は大きい。それだけに、この度の閉館は関西の美術ファンにとって図り知れないダメージとなるだろう。最後の企画は、同館が最も得意とするポスターの展覧会。サントリー社が所蔵する約2万点のポスターの中から、選りすぐりの400点が展覧される。19世紀末のアール・ヌーヴォーに始まり、1920年代のアール・デコ、1960年代のポップ・アートを経て、1990年代後半の作品まで、グラフィックアートの近代史を一気に展観する内容だ。時代を映し出す鏡とも言えるポスターの名作を見ながら、笑顔でサントリーミュージアム[天保山]とお別れしたい。
2010/10/20(水)(小吹隆文)