artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
プレビュー:山荘美学~日高理恵子とさわひらき~展
会期:2010/12/15~2011/03/13
アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]
自宅の庭にある百日紅を、見上げた構図で描き続ける日高理恵子。見慣れた自分の部屋を、小さな船や動物たちが行きかう別世界に変身させてしまうさわひらき。2人がアサヒビール大山崎山荘美術館で競演する。日高は、安藤忠雄設計の新館で、天窓を生かした展示を行ない、同館所蔵のモネの《睡蓮》と並置される。さわは、古い洋館の本館を会場に、アンティークな雰囲気の中で映像作品の展示を行なう。個性豊かな空間で、2人がどのような世界をつくり出すかに注目したい。
2010/11/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:伊東宣明 展“回想の遺体”
会期:2010/12/07~2010/12/12
立体ギャラリー射手座[京都府]
“生と死”という根源的なテーマを追求した作品を制作し、遂には葬儀会社に就職した伊東宣明(現在は退職)。就職後1年半の間に100体以上の遺体と接してきた彼が、その都度つけてきたメモを頼りに、遺体を丹念に回想する。記憶は時と共に薄れるため、回想の遺体は事実とも虚構ともつかない状態になる。そのもどかしさのなかにこそ、伊東が探し求める解が見つかるのかもしれない。
2010/11/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:しりあがり寿「わしはもう寝る」展
会期:2010/12/02~2011/01/23
ギャラリーOUT of PLACE[奈良県]
今年10月に奈良で開催された「奈良アートプロム」で、約40台のモニターを駆使して抱腹絶倒の映像作品を見せてくれたしりあがり寿。その縁が続いているということか、間髪を入れず再び奈良での個展が決定した。作品は、1,000人の寝ているオヤジを描いた小品群《わしはもう寝る》。2009年に東京で開催された個展の巡回だが、それでも関西のファンにとって朗報なのは間違いない。石膏の額縁に収まってグースカ寝ているオヤジたちに早く会いたい!
2010/11/20(土)(小吹隆文)
「その他」のチカラ。森村泰昌の小宇宙
会期:2010/11/20~2011/03/13
兵庫県立美術館[兵庫県]
森村作品のコレクターとして知られるO氏が、兵庫県立美術館に72点の作品を寄贈。現在もO氏が所蔵する作品も加え、約80点が展示された。いわゆるミュージアムピースはなく、小品や書、陶器など、普通の森村展では見られない珍品が多い。また、制作中のポラや、作品のピース、試作品、バージョン違いなど、通常ではまず手に入らないレア・アイテムも。作家とコレクターの厚い信頼関係が窺えるとともに、森村作品の秘密にも迫れる貴重な機会となっている。ミュージシャンのCDにレアトラックスと題した企画物があるが、本展はその美術版と言って良いだろう。来年1月には森村の大規模展「なにものかへのレクイエム」が兵庫に巡回する。両方を見れば、なおさら感動が深まるというものだ。
2010/11/19(金)(小吹隆文)
新incubation2「Stelarc×contact Gonzo─BODY OVERDRIVE」展
会期:2010/10/30~2010/11/28
京都芸術センター[京都府]
身体にフックをつけて吊り下げられるパフォーマンスで知られ、近年は医学やロボット工学を取り込んだ作品を制作しているステラークと、ストリートファイトから導き出される過激なパフォーマンスで知られるcontact Gonzo。ベクトルは違えど、“肉体”という共通のキーワードを持ち、見る者に本能的な衝撃を与える両者を共演させるとは、何とも大胆な試みだ。しかし、彼らの真骨頂を体感できるのは、やはりライブ・パフォーマンスしかない。contact Gonzoは会期中に二度、ステラークはロンドンからのWEB中継を一度行なったとはいえ、ほとんどの期間は資料展的な見せ方にならざるをえないのが本展の限界だ。美術展の枠内でパフォーマンスを扱うことの難しさを、改めて実感した。ただし、北ギャラリーでcontact Gonzoが行なったサウンド・インスタレーションは別物。ライブの素材から新たな価値をつくり出すことに、見事に成功していた。
2010/11/16(火)(小吹隆文)