artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
青木良太 展
会期:2010/09/24~2010/10/30
小山登美夫ギャラリー京都、TKGエディションズ京都、eN arts[京都府]
若手陶芸家の旗手として活躍中の青木だが、関西での個展は珍しい。それだけに、この機会を待ちわびていたファンも多かったのでは。展示は会場ごとに傾向が異なった。小山~では、器ではなくオブジェを展覧。逆にTKG~では、150点以上の器類が並び、コレクターの購買意欲を大いに刺激した。しかし、私が最も感心したのは、eN artsでのプレゼンテーション。八坂神社に隣接し、知恩院、高台寺、清水寺にもほど近い円山公園というシチュエーション、そして茶室を持つ画廊という特性を生かして、出品作品を茶席のセットで統一していたのだ。なかでも、画廊所蔵の銀食器と共にアレンジされ、“某国の王族が見よう見まねで茶会の設えをしたら”という設定のテーブルは、思わず微笑を誘う珍奇さで、見事であった。
2010/09/28(火)(小吹隆文)
河地貢士 個展 a HOSPICE
会期:2010/09/18~2010/10/23
studio J[大阪府]
スナック菓子の「うまい棒」に仏を彫った《うまい仏》や、欠けたポテトチップを金接ぎした《Embalming-Potato Chip-》、漫画雑誌を苗床にしてカイワレを育てる《まんが農業》など、ユーモア感覚に満ちた作品が展示された。ジャンクフードに仏が宿り、ポップカルチャーから生命が息吹く。これはファンタジー? それとも皮肉? 河地にとってこれが関西初個展とのこと。個性的な着眼点を持つ作家に出会えてラッキーだった。彼をセレクトした画廊に感謝。
2010/09/24(金)(小吹隆文)
panorama すべてを見ながら、見えていない私たちへ
会期:2010/09/18~2010/10/24
京都芸術センター[京都府]
内海聖史、押江千衣子、木藤純子、水野勝規を擁した企画展。絵画、映像、インスタレーションという、タイプの異なる作品をさまざまな環境で提示し、作品を「見ること」の意味を問い直した。会場は元小学校をリフォームしたアートセンターで、南北2つのギャラリーに加え、エントランス、廊下、談話室、和室と、ほぼ全館を使用した。カラフルな点の集積で豊かな空間をつくり上げる内海、見る者の内面に浸透するような情景を描く押江、グラスなど透明感のある素材の小オブジェを、そっと添えるように提示する木藤、日常とは異なる時間の流れが感じられる映像が持ち味の水野、四者の個性が響き合い、得も言われぬ芳香が空間を満たしていた。見る順序を変えれば、また新たな感興を得られる気配も。ボリュームは決して大きくないが、濃密な味わいで深い充足感が得られる好企画だった。
2010/09/22(水)(小吹隆文)
プレビュー:FLAT LAND 絵画の力
会期:2010/10/05~2010/11/07
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
現在活躍中の10名の若手画家を紹介する。いずれもメディア環境が劇的に変化した1990年代後半を経験したゼロ年代世代なのが本展のキモ。3つの観点──モダンアートの現在を絵画についてどう考えているか、ゼロ年代絵画と80年代絵画の関連あるいは違い、インターネットで簡単に画像や動画が入手できる状況下で「絵画の力」はどのような点にあるのか──を軸に、彼らの表現と現在の絵画の状況を明らかにしていく。出品作家は、大竹竜太、川口奈々子、小柳裕、高木紗恵子、中岡真珠美、ロバート・プラット、北城貴子、前田朋子、増田佳江、横内賢太郎だ。
2010/09/20(月)(小吹隆文)
プレビュー:Hoi!「生活とデザインの接点を探る」オランダデザイン展
会期:2010/10/02~2010/11/07
PANTALOON、BY PANTALOON、graf、Toi、space_inframance[大阪府]
コンセプチャルな思考と実用性を絶妙のバランスで実現させているオランダ・デザインのエッセンスを探るべく、同地で活動している5組のデザイナー、アーティスト、教育機関を招聘。建築、グラフィック、食、プロダクト、匂いといった広範なテーマについて、展示、ワークショップ、レクチャーを行う。会場はオーソドックスなギャラリーではなく、デザインスタジオとギャラリーを併設するスペース、ファッションを中心としたセレクトショップ、基礎化粧品や生活関連商品を扱うショップと、出品作家に劣らずユニーク。会期中は大阪市内に点在する5会場を行き来する人たちの姿が目につきそうだ。
2010/09/20(月)(小吹隆文)