artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
カッレ ランペラ展 ─HANDWERKE─
会期:2010/10/05~2010/10/23
サイギャラリー[大阪府]
大阪の淀川べりの風景や広島の厳島神社、モスクワのビルなどを、シンプルな線描で描いている。描写は程よく簡略化されていており、センスの良い作品だ……と思っていたら、線が紙から浮いているではないか。なんと、紙の上に糸を引いてあるのだ。自分が撮影した風景写真を紙の上に投影し、針で穴をあけて糸を通しているらしい。いやはや、よく思いついたものだ。雑誌やポスターのイラストにも向いていそうなので、扱い方次第で幅広く活躍できる人材なのでは。
2010/10/06(水)(小吹隆文)
藤本絢子 個展 “あかく歪む私の箱庭”
会期:2010/10/05~2010/10/10
同時代ギャラリー[京都府]
ここ3年ほど、金魚をモチーフにした絵画を制作し続けてきた藤本が、シリーズの集大成的な個展を開催。金魚の顔を真正面から描いたキャッチーな構図の作品から、半ば抽象化された物まで、その触れ幅はさまざま。300号や150号の大作を惜しみなく出品しており、同シリーズの集大成的展示となった。
2010/10/05(火)(小吹隆文)
三瀬夏之介 展「肘折幻想」
会期:2010/10/02~2010/10/23
イムラアートギャラリー[京都府]
以前は奈良県在住で、関西で頻繁に展覧会を行っていた三瀬だが、山形県に移住してからはとんと御無沙汰。最近は「東北画は可能か?」なんて言い始めて、ますます実態が分からなくなっていた。それだけに本展は、彼の現在を知る貴重な機会となった。山形の肘折温泉で制作した《肘折幻想》は、十曲一隻の大作屏風。作風は一見以前と変わらないが、無軌道すれすれの混沌というよりは、沈静な趣をたたえた作品だった。会期初日に本人と話す機会を得たが、キーワードの「東北画」とは、独自の様式ではなく、自分が乗り越えるべき壁として設定されているように感じた。三瀬は今までもずっと自分で課題を設定し、それを乗り越える過程で進化を続けてきた作家だ。山形という新たな環境、「東北画」という新たな課題を得た三瀬が、今後どのように展開して行くのか、期待が募る。
2010/10/02(土)(小吹隆文)
キャラバン隊・美術部 第三回展覧会 JIROX かなもりゆうこ二人展「BANG A GONG! トーキョー/キョート」
会期:2010/10/01~2010/10/10
MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w[京都府]
美術と出版で活動する「キャラバン隊」が企画した展覧会。映像作家のかなもりゆうこと、パフォーマー&オブジェ作家のJIROXが共演した。展示は、かなもりの映像(3画面で1点の作品)と、JIROXのオブジェからなる。JIROXは終日会場にいて、自作楽器で即興演奏をしたり、頭部を叩いて打楽器代わりにしていた。かなもりの作品は普段とは少し様子が異なり、JIROXの世界がそのまま引っ越して来たかのよう。一見アンバランスな取り合わせの本展だが、見れば見るほど馴染んできて、やがて絶妙のコラボだとわかる。それにしてもJIROXは、まるで仙人のようだ。彼を知っただけでも、本展に出かけた価値があった。
2010/10/02(土)(小吹隆文)
佐川好弘 個展「動と悩 why」
会期:2010/09/28~2010/10/03
ギャラリーはねうさぎ[京都府]
佐川の作品は、メッセージが言葉の形のままオブジェ化している。「君と僕」「解キ放テ」「君らしく」など、その内容はベタととも言えるが、例えば「解キ放テ」のオブジェを背負って富士登山を実行するなど、実際の行動を伴うことで見る者をポジティブな方向へと導くのだ。本展では、今年8月に富山県南砺市で行なわれた「上畠アート」で発表した作品《君らしく》が再現され、設置の状況を記録した写真作品も出品された。公道に標識の規格で書かれた「君らしく」の文字。爽快じゃないか、突き抜けているじゃないか。身体的ダイナミズムをもって、思考を現実界に直結させること。それが佐川好弘の優れた資質であると、改めて確信した。
2010/09/28(火)(小吹隆文)