artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

4人のペインティング

会期:2010/01/08~2010/01/30

小山登美夫ギャラリー京都[京都府]

福永大介、工藤麻紀子、桑久保徹、大野智史による絵画展。4人とも首都圏を拠点に活動している作家なので、私にとっては初めての出会い。今までなかなか見られなかった地元以外の作家と出会えるのは嬉しい。4人の中では桑久保徹の作品(画像)が気になった。海辺らしき情景をかなり引いた視点からパノラミックに描き出している。絵具を盛り上げた力強いタッチには、晩年のゴッホやムンクを思わせるところも。聞けばこのこの人、画家としての生き様に自覚的で、敢えて屋外で描いたことがあったり、自分のなかに架空の画家像を見出して制作過程を記録した書籍を自費出版しているらしい。なんだか興味が湧いてきた。ほかの作品も見てみたい。できれば次は個展で。

2010/01/12(火)(小吹隆文)

大友良英 hyper wr player-without records hi-fi version-

会期:2010/01/08~2010/01/31

shin-bi[京都府]

会場の中央には、4本のアームがついたレコードプレーヤー型オブジェが1点。レコードは乗っておらず、本来レコード針があるはずのヘッド部分には独自の改造が施されている。それら4本のアームはランダムな動きを見せながらターンテーブルを引っ掻き、ノイズの自動演奏を行なうのだ。音楽を再生する機械から本来の目的を奪った時、そこからどんな音(音楽)が生みだされるのか。その実験の成果がこのサウンドオブジェなのだろう。

2010/01/12(火)(小吹隆文)

上田順平・山本太郎・龍門藍「俗なる美意識」

会期:2010/01/20~2010/02/20

イムラアートギャラリー[京都府]

卑俗で過剰な装飾をまとったキッチュな陶オブジェで知られる上田順平、現代と伝統がハイブリッドした日本画を制作する山本太郎、少女人形などをモチーフにした油彩画の龍門藍が出品。いずれも日常生活に根差した視線で現代の雑食的な日本文化を浮き彫りにする作家たちだ。3人のなかでは龍門の作風がやや浮いているように思われるが、それをどのようにまとめ上げるのか、ギャラリーのディレクションにも注目したい。

2009/12/31(木)(小吹隆文)

感じる箱 展 grafの考えるグラフィックデザインの実験と検証

会期:2010/01/19~2010/03/13

dddギャラリー[大阪府]

大阪を拠点にさまざまな分野のデザインを手掛けているgrafによる展覧会。テーマは「感じる箱」。箱という立体性と空間性をともなうモチーフを駆使して、グラフィック表現の新たな可能性を問いかけるのだ。彼らは自身のスペースが大阪・中之島にあるため、地元の他所のスペースで発表を行なう機会は珍しい。それだけに、ここの作品だけでなく空間全体でどのようなプレゼンを行なうのかが気になる。

2009/12/31(木)(小吹隆文)

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正延正俊─1960年代を中心に─

会期:2010/01/16~2010/02/20

ギャラリーヤマグチクンストバウ[大阪府]

正延正俊(1911~1995)は具体美術協会結成に関わった作家で、すべての「具体展」(第1回/1955~第21回/1968)に参加した稀有な存在である。具体メンバーの多くがアクションペインティングやパフォーマンス等の実験的作風に傾斜していくなか、彼は一貫してペインティングにこだわり続けた。それゆえという訳でもなかろうが、現在では知る人ぞ知る存在になってしまった。本展はそんな正延の再評価を試みるもの。芦屋市立美術博物館学芸員の加藤瑞穂をキュレーターに起用し、1960年代の作品を中心に主要作品を紹介。彼の大規模な個展としては実に45年ぶりの開催となる。

2009/12/31(木)(小吹隆文)