artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

佐伯慎亮『挨拶』

会期:2009/10/17~2009/11/21

FUKUGAN GALLERY[大阪府]

最近は写真だけでなく映画の撮影も担当するなど、ますます評価と活動の幅を広げている佐伯慎亮。作品集の発売を記念した本展では、過去の作品からセレクトされた大量の作品が画廊壁面を取り囲むように展示された。いわばベスト・オブ・佐伯だ。喜び、悲しみ、怒り、笑い、生と死など、この世で遭遇するありとあらゆる感情・体験を丸ごと飲み込んで吐き出したかのような彼の作品は、一言でタイプをくくり切れない混沌が大きな特徴だ。そして、作品に身を浸すうちに、身体の内からポジティブなパワーがふつふつと湧いてくる。この汚濁と清浄が一体化したかのような感覚こそ佐伯作品の最大の魅力ではなかろうか。作品を見るうち、泥の中から開花する蓮の姿を連想した。

2009/11/13(小吹隆文)

Exhibition as media 2009『drowning room』

会期:2009/10/31~2009/11/23

神戸アートビレッジセンター[兵庫県]

大﨑のぶゆき、田中朝子、冨倉崇嗣、中川トラヲ、森本絵利によるグループ展。ギャラリーの他、シアター、スタジオ、パブリックスペース、階段、トイレなど、建物を縦横に駆使することで、各作家のパフォーマンスが十二分に発揮された。ギャラリーを応接間に見立てた演出や、展覧会に至るプロセスをドキュメント仕立てで公開したコーナーも斬新だった。アーティスト・イニシアティブの良い面が発揮された訳だが、彼らを支えたキュレーターにも拍手を送りたい。ちなみにタイトルの『drowning room』とは、今回のアーティストに共通する傾向「drown(溺れる、夢中にさせる)」と、「draw(描く)」、そして「drawing room(応接間)」をかけて作られた造語である。

2009/11/1(小吹隆文)

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中島俊市郎 展

会期:2009/10/31~2009/11/21

studio J[大阪府]

蛍光色のプラスチック素材で作られたひも状のオブジェ(カラフル!)が、大量に天井から垂れ下がっている。まるでパーティの飾りつけみたい。軽やかで、華やかで、見ているだけで楽しくなる。日頃から工芸家であることに自覚的な中島だが、今回の作品は少し雰囲気が違うなと思っていたところ、本人の説明を聞いて納得した。オブジェの両端にはフックが付いており、リングにすればネックレスへと変身するのだ。いや、ネックレスが本来の姿で、むしろ今回の展示がバリエーションということか。「自分はあくまで工芸家ですから」。そんな作家の自負が聞こえてくるようなプレゼンだった。

2009/10/31(小吹隆文)

ルイ・カーン展

会期:2009/10/10~2009/11/22

ギャラリーヤマキファインアート[兵庫県]

ルイ・カーンといえばシュポール/シュルファスの作家。その程度の知識しかなく、有名作家の新作を関西で見られるなんて、という一点で画廊に出かけた。メッシュの上に半透明の絵具で描かれた作品は、エレガントな軽やかさを放っており、いかにもフランス人という感じ。モネの《睡蓮》との関連もうかがえる。支持体の特性ゆえ透過光が壁面に映り、エコーのような効果を上げているのも印象的だった。

2009/10/30(小吹隆文)

秋山陽 展

会期:2009/10/27~2009/11/21

アートコートギャラリー[大阪府]

巨大な陶オブジェが、たっぷりとした空間を伴って展示されている。皿状のパーツを無数に積み重ねて大きなフォルムを形成している作品は大層迫力があり、その存在感はまるで古代遺跡の出土品のようだ。こういうスケールの大きな作品をギャラリーで見ると、大抵は手狭な感じがするものだが、会場のギャラリーは十分な広さと高さを持つので作品に負けていない。結果、美術館クオリティの劇的な作品展示を堪能できた。照明が巧みだったことも付記しておく。

2009/10/29(小吹隆文)