artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

水都大阪2009

会期:2009/08/22~2009/10/12

中之島公園・水辺会場、八軒家浜会場、水の回廊・まちなか会場[大阪府]

大阪・中之島エリアを中心に、約7週間にわたって多数のワークショップ、展覧会、各種イベントが開催された「水都大阪2009」。しかし、終了後に改めて思ったのは、果たしてこの催しにアートは必須だったのかという疑問だ。もちろん、ヤノベケンジは奮闘したし、今村源が適塾で行なった展示は見応えがあった。ワークショップのなかにもきっと素晴らしいものがあったのだろう。でも、私が何度か会場を訪れて感じたのは、アートと言うよりも文化祭的な狂騒ばかりだ。いや、最初からアートは脇役で、私が勘違いしていただけなのかもしれない。結局、最後まで意図を理解できないまま「水都大阪」は終わってしまった。

2009/10/12(月)(小吹隆文)

水野勝規 新作展「フィールド・モーション」

会期:2009/10/09~2009/10/24

ARTCOURT Gallery[大阪府]

薄暗い会場では、複数の映像作品が上映されていた。楽園のような水辺の風景を映し出す作品や、真っ青な空を飛行機雲の白い線が切り取っていく作品がある。工事現場のクレーンが動く様子や、料理旅館の宴会を窓越しに捉えた作品もある。それらに共通するのは、盛り上がりを意図的に排除していることだ。しかし、淡々と過ぎる時のなかで起こる小さな変化が、見る者の心に確かなカタルシスをもたらす。俳句を映像で作ったらこんな感じになるのかもしれない。

2009/10/09(金)(小吹隆文)

長澤英俊 展 オーロラの向かう所

会期:2009/10/10~2009/12/13

国立国際美術館[大阪府]

長澤英俊は著名な作家だが、日頃はイタリアを拠点に活動しているため、若輩の私にはなじみが薄い。そのためニュートラルな状態で本展を見たわけだが、約2,000平米の会場に20点という、たっぷり余裕を持たせた構成がとても印象的だった。1点1点が伸びやかに配置され、それでいて各作品の磁場が干渉し合うような心地よい緊張感が張り詰めていたからだ。観客と同じ次元に置かれる彫刻は、間の取り方が絵画展以上に難しい。本展は、美術館で見られる彫刻展としては、最も上質な部類ではないか。記者発表時に、長澤自身も今回の展示には満足していると発言していた。

2009/10/09(金)(小吹隆文)

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井上隆夫の世界展

会期:2009/10/06~2009/10/25

ギャラリー白川[京都府]

ギャラリー1階に並んでいるのは、一部が焼けた木の柱や、内装の一部など、建築廃材の数々。一部が焼けた木の柱や、内装の一部などだ。しかし、実はこれらは廃材ではない。古新聞やチラシを無数に重ねたものから削り出され、着色して作られたオブジェなのだ。造形があまりにも精密なため、説明を聞かなければその事実に気付かない人も多い。井上は決してフェイクを作りたいのではなく、役目を終えた紙を再び木材に戻して、新たな生命を与えたいのだという。いっぽう2階では、以前の代表作によるインスタレーションを展示。和紙で半円形を作り、軸の上に固定された花のような立体作品だ。極めて薄く軽いそれらは、人が通るだけで揺らめく。その様子は、まるで花畑のように美しかった。

2009/10/06(火)(小吹隆文)

神戸ビエンナーレ2009

会期:2009/10/03~2009/11/23

メリケンパーク、兵庫県立美術館、神戸港海上、ほか[兵庫県]

2回目を迎えた神戸ビエンナーレ。今回はメイン会場のメリケンパークに加え、兵庫県立美術館と神戸港海上でも作品展を開催。3会場を船で繋ぐという港町・神戸らしい演出も導入された。また。メリケンパーク会場で文化庁メディア芸術祭の入賞・入選作品の上映が行なわれたり、三宮・元町商店街では地元と大学生の協同プロジェクトが行なわれるなど、バラエティの豊かさも実感できた。結論から言うと、その方向性は正解。招待作家を県立美術館に集めることで質の高い展覧会が見られたし、船に乗るのは単純に楽しい。メリケンパークにコンテナを並べて行なわれた展示も前回より進歩が感じられた。また、全会場に入場でき、船にも乗れる一番高額なチケットが1,500円という価格設定は、良心的と言ってよいだろう。あえて苦言を呈すると、コンテナ展示の一部は進歩が感じられなかった。児童絵画展と障害者作品展はともかく、陶芸展といけばな展はもっとやりようがあるはずだ。この点は第3回の課題として改善を希望する。

2009/10/02(金)(小吹隆文)