artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

絵画の庭 ゼロ年代日本の地平から

会期:2010/01/16~2010/04/04

国立国際美術館[大阪府]

2000年以降に登場した若手世代を中心に28作家をセレクトして、現代日本の絵画シーンを展観する意欲的な企画展。先行世代としてO JUN、小林孝亘、奈良美智らが入っているが、彼ら以外の多くは近年頭角を現わしてきた20代~30代前半が占める。なかには加藤泉やタカノ綾、町田久美など既に著名な作家も入っているが、個人的には栗田咲子、はまぐちさくらこの関西勢2人がどう評価されるかに注目している。気合の入った展覧会になりそうなので、正月ボケの矯正にも最適だ。

2009/12/20(日)(小吹隆文)

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井上雄彦 最後のマンガ展 重版〈大阪版〉

会期:2010/01/02~2010/03/14

サントリーミュージアム[天保山][大阪府]

2008年に東京で開催され大反響を巻き起こした展覧会なので、何を今さらという気もするが、恥ずかしながら当方は初見なので感想を記しておく。まず、絵が上手い。ペン画はもちろんだが、大作の墨絵は圧巻と言う他なし。週刊誌の連載で超多忙なはずなのに、いつの間に墨と筆の扱いをマスターしたのだろう。仕事を遂行するうえで必然的に身についたのだろうか。立体漫画であり巨大紙芝居、映画的な感覚も兼ね備え、インスタレーションでもある本展。過去の原稿を並べたこれまでの漫画展とはまったくレベルの違う代物だということは間違いない。

画像クレジット:©I.T.PLANNING

2009/12/20(日)(小吹隆文)

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野兎の眼 松本典子 写真展

会期:2009/11/03~2009/11/28

Calo bookshop & cafe[大阪府]

奈良の奥吉野に住む少女を10年にわたり追い続けた写真作品。その過程で少女は母親になったが、本作の目的は彼女の成長を追うことではない。写真家と被写体が綱渡りのように保ち続けた繊細な「距離感」こそが重要なのだ。展示はセレクトされた約40点で構成されており、コンパクトながらも豊かな空間が作り出されていた。同時に分厚い作品ファイルも出品されていて、より濃密に10年間の軌跡を味わうこともできる。編集次第でさまざまなバージョンを作れるのは写真ならではの醍醐味だ。

2009/11/3(小吹隆文)

豊嶋浩子「詩と絵画」─宮沢賢治『春と修羅』より─

会期:2009/11/24~2009/11/29

立体ギャラリー射手座[京都府]

宮沢賢治の詩の一節と日本画を組み合わせて展示。詩を通して絵画を味わうか、絵画を通して詩の世界に思いを馳せるか、どちらにせよ味わい深い個展となった。文学からインスパイアされた美術作品は決して珍しくないが、本展の印象が良かったのは絵画の出来が良かったから。作者の豊嶋は広島在住の大学院生。最近は日本画の若手にヒットが少ないので、その反動もあって余計に感心したのかもしれない。彼女の着実なステップアップに期待する。

2009/11/25(水)(小吹隆文)

加賀城健 展

会期:2009/11/25~2009/12/05

石田大成社ホール[京都府]

工芸の世界では失敗とされるボケや滲みを生かしたり、抽象絵画のようにアクションの軌跡を強調した染色作品を制作する加賀城健。これまでの個展で多彩な表現を見せてきた反面、ネタが尽きないのか心配でもあったのだが、彼にはまだまだ十分なキャパシティがあるようだ。今回の作品は、市販の水玉模様の布を脱色することで、模様と脱色部分の間に微妙なレイヤー構造を生じさせるというもの。染色の現場で用いられる伸子針を利用した展示も効果的で、彼にしか表現できない独特の世界を見ることができた。

2009/11/25(水)(小吹隆文)