artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
藤浩志“Toys Saurus”
会期:2009/10/17~2009/11/21
MORI YU GALLERY[京都府]
近年の藤浩志といえば「かえっこ」プロジェクトに代表される“アートプロジェクトの人”という印象が強い。そんな彼が個展を行なうのは意外な気もした。実際、関西での個展は1993年の芦屋市立美術博物館以来ではなかろうか。作品は、玩具やガラクタを合体させて作った怪獣やお城、乗物など。これまでの活動で発生した廃棄物を上手にリサイクルしつつ、アーティストとしての一貫性を保っている。同時にドローイングも多数発表。意外な(といっては失礼か)絵の上手さにも軽い驚きを覚えた。
2009/10/27(小吹隆文)
入口卓也 ceramic works「はじまりは今」
会期:2009/10/23~2009/10/28
AD&A gallery[大阪府]
複数の陶土の塊を投げつけたかのように合体させ、両手で張ったテグスでカットした陶オブジェ(やきものなので、当然内部は空洞に加工されている)。岩石を連想させるそのフォルムはどこか人為を越えた魅力を放っており、火山地帯の奇景やイヴ・タンギーの絵画を連想させる。床の間に飾ったら似合いそうだし、逆にモダンリビングの部屋でも異彩を放ちそうだ。茶道家や華道家とコラボして新たな可能性を引き出すのもきっと楽しいだろう。
2009/10/26(小吹隆文)
「野兎の眼」松本典子 写真展
会期:2009/11/03~2009/11/28
約10年間にわたりひとりの被写体を追い続けた写真展。少女が大人になり、母親になる過程が、奥吉野の自然や季節とともに綴られる。特定の個人と長期間パートナーシップを結ぶことで初めて得られる確かなリアリティ(絆と呼ぶべきか)、そしてプリントに凝縮された時間を体感したい。
2009/10/20(火)(小吹隆文)
Exhibition as media 2009「drowning room」
会期:2009/10/31~2009/11/23
神戸アートビレッジセンター[兵庫県]
1996年から2005年にかけて開催された「神戸アートアニュアル」のセカンドステージとして、一昨年より始動した企画展。神戸アートビレッジセンター主催の美術展のなかで、若手主体の「1 floor」と並ぶ中心的な催しである。その特徴は、出品アーティストが主体的に展覧会を作り上げるアーティスト・イニシアティブと、その間の活動記録をブログで発信していくワーク・イン・プログレス的なライブ感だ。今回選ばれた作家は、大﨑のぶゆき、田中朝子、冨倉崇嗣、中川トラヲ、森本絵利の5名。ジャンルと作風が異なる彼らが濃密に接触することで、どんな化学反応が起こるか要注目だ。
2009/10/20(火)(小吹隆文)
新incubation1-ベテランと若手作家が出会う Real Life Sensibility─物とイメージの往還から
会期:2009/10/27~2009/11/23
京都芸術センター[京都府]
これまで主に新人作家の紹介を行なってきた「incubation」が、その内容を一新。若手とベテランが一対一で向き合い、その共鳴を確かめる場となる。1回目に選ばれたのは、碓井ゆいと高柳恵里。今年春に京都の元小学校で行なわれたグループ展で、壁紙付きのベニヤ板が教室に散乱する鮮烈なインスタレーションを発表した碓井と、既成品に最小限手を加えることで物事や状態が成り立つ本質を露わにする高柳。作風も世代も異なる2人が対峙することで、どのような世界が立ち現われるのか楽しみだ。
2009/10/20(火)(小吹隆文)