artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

公募京都芸術センター2010

会期:2010/02/05~2010/02/24

京都芸術センター ギャラリー北・南[京都府]

毎年ひとりの審査員を立て、ギャラリー(2室)の展示プランを公募する本展。今回は映画監督の河瀬直美が審査員を担当。126件の応募の中から、寺島みどりと森川穣のプランが選出された。寺島は会期中継続して壁画の公開制作を行ない、自身が触れた世界や記憶の断片をライブ感覚で描き出す。森川はギャラリーの床下の土を移設して「確かなこと」を問いかけるインスタレーションとする予定。毎回力の入ったプランが実現され、若手の登竜門的なポジションとなっている展覧会だけに、今年の2人も要注目である。

2010/01/20(水)(小吹隆文)

コイズミアヤ展 隣の部屋

会期:2010/01/18~2010/01/30

ギャラリー編&かのこ[大阪府]

《隣の部屋》と題されたシリーズ作品は、建築模型を思わせる白い立方体の中にさまざまなパーツが組み込まれたもの。観客はそのパーツを取り出し、自由に配置して楽しむことができる。一方、《monado》は玩具のダイヤブロックを素材にした小品群。既成品を用い、できるだけ少ない手数で造形化することを課した作品だ。ミニマルなフォルムとダイヤブロック特有のマットな色彩がマッチしてとても美しかった。

2010/01/18(月)(小吹隆文)

泉洋平展「トけゆくシカク」

会期:2010/01/09~2010/01/31

studio90[京都府]

暗室の中でピンスポットライトが壁に向けて照らされている。壁にぶつかって反射した光がおぼろげに照らし出すのは、宙に浮かぶ大きな立方体。立方体といっても確固たる立体物ではなく、縦・奥行きともに68段ずつ張られた黒い糸の一部分を白くペイントすることで立ち現われる立方体のイメージだ。エッジがぼやけ、見る角度によって微妙に様相を変化させるそれは、なるほど「トけゆくシカク(四角と視覚のダブルミーニング)」。これまで主にタブローで「見る」ことと「認識する」ことの関係性を問いかけてきた泉だが、今回のオプ・アート的作品は彼の新たな武器となることであろう。

2010/01/17(日)(小吹隆文)

この世界とのつながりかた

会期:2009/10/24~2010/03/07

ボーダレスアートミュージアムNO-MA+尾賀商店[滋賀県]

秋葉シスイ、奥村雄樹、川内倫子、仲澄子、橋口浩幸、松尾吉人、松本寛庸、森田浩彰の8名が出品。戦中の少女時代の思い出を絵日記風に綴る仲澄子や、子どもたちとの日常をホームムービー風の映像作品に仕上げた奥村雄樹など、日々を慈しむような作品が目立つ展覧会だった。ひとり別会場でスライドショーを行なった川内倫子の作品は、13年間にわたる家族の写真で構成されており、その膨大な量と密度から目が離せなかった。それらの中でやや異質に感じられたのが秋葉シスイと森田浩彰の作品。秋葉は抽象的な荒野のような空間に人がたたずむ絵画で、森田は一見スチールに見えるが実はムービーの映像。2人の作品だけ理が勝ち過ぎているように見えたのは私だけだろうか。

2010/01/17(日)(小吹隆文)

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絵画の庭 ゼロ年代日本の地平から

会期:2010/01/16~2010/04/04

国立国際美術館[大阪府]

1990年代以降の絵画シーンを語るうえで外すことのできない“具象的傾向”を持つ作家たちをまとめて紹介。奈良美智、小林孝亘、O JUN、会田誠ら90年代後半に頭角を現わした世代と、ゼロ年代に登場した若い世代28作家が一堂に会した。また、世代的には異質だが、草間彌生が2004年に描いた未発表の連作絵画も出品された。具象的傾向といっても作品の様相はバラエティに富み、主催者も何らかの結論を打ち出すつもりはないようだ。ここから何を見つけ、どんな主張を導き出すのか。議論のお膳立てをした点に本展の意義はあるのだろう。初日前の記者発表には出品作家のほとんどが来場していたが、30歳前後の若い作家が半数以上を占めていたのではないか。その華やいだ雰囲気を前に「うわー、こんなに若くても国立美術館で発表できるのか」とオヤジ臭い感慨を抱いた筆者(45歳)であった。

2010/01/15(金)(小吹隆文)

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